当然のことながら、世界の株式市場を株高へと導いているのは、米国の株式市場が力強く上昇を続けているということに起因します。カネ余りの金融相場とIT企業が引っ張る業績相場がうまく重なり合ったうえに、大型の法人税減税法案への期待感が高まったことで、米国株はここ4~5カ月間の上昇ピッチは加速してきています。
NYダウ平均が2万2000ドルを超え2万3000ドルまで達する(1000ドル単位を上げる)のに51営業日を要しました(これは相場の歴史から見てもかなり早いほうです)が、さらには2万3000ドルを超え、2万4000ドルに達するまでにはわずか31営業日しかかからなかったのです。その後もNYダウは13営業日で2万4876ドル(取引時間中の高値、2017年12月18日)まで駆け上がりましたが、明らかに上昇ピッチが速すぎるといっても過言ではないでしょう。
米国の株価は「クライマックス」が近づきつつある
米国の市場関係者の多くが「米国株は歴史的に見て割高である」と判断しているものの、それでも「今回はバブルではない」という意見が大勢のようです。バブルではないことの根拠は、「今後も企業業績は伸びるから」という理由からです。世界的な経済成長、低い物価上昇率、緩やかな利上げに加え、法人税減税が最大の効果を発揮して、企業の収益率は2018年も伸びるというわけです。米大手証券のゴールドマンサックスは「1兆5000億ドル規模の減税案が成立すれば、米主要企業の1株当たり利益は2018年に7%押し上げられる」と2017年10月時点で試算していましたが、そのときと比べて米国株はすでに7%程度の上昇をしてしまっています。今回、大型の税制改革法案成立の見込みが立ったことで、米国の株価はまさにクライマックスが近づきつつあるのではないでしょうか。
私も米国株はまだバブルではないと考えていますが、プチバブルの水準には達しているのではないかと懸念しています。やはり最大の懸念は、世界の中央銀行が物価目標に固執するあまり、経済のパラダイムが変わっている状況を無視してしまっているということです。経済のグローバル化やITの技術革新によって、先進国では海外から安価なモノ・サービスが流入したのに加えて、労働分配率が低下する傾向が鮮明になっています。1990年代までとは異なり、高齢化の進展もあり労働力人口の伸びが鈍化するという問題も生じてきています。そのうえ、中国などの新興国の成長率は減速し、世界全体を牽引する力は落ちてきているのです。
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