アマゾンの「データ分析」はここまで徹底する 礎を築いたキーマンが著書で明かす裏側
しかし残念ながら、そのことばかりに意識を集中させていると、多少なりとも肩透かしを食らうことになるかもしれない。なぜならこれは「アマゾン誕生秘話」のたぐいではなく、描かれているのは「アマゾンの礎を築いたビッグデータ専門家が明かす、大手データ企業の戦略」だからだ。
想像もつかないほど地道な作業が行われていた
印象的なのは、2000年代初頭のアマゾンで、さまざまな実験が行われていたことが明らかにされる第1章「データの積み重ねが財産になる」だ。ここを読むと、私たちアマゾン・ユーザーには想像もつかないほど地道で、気の遠くなるような作業が行われていたことがわかる。
このようにクリックと購入のデータを統合して推奨システムを構築し、アマゾン以外の出品者がAmazonサイトで商品を販売するためのプラットフォームもつくり、そうした企業の商品を保管するための倉庫スペースも提供。そこまですることによって、分析に使えるデータの範囲はさらに広がったというのである。
もちろんeコマースにおいて、データを保存することそれ自体は革命的でもなんでもない。至極当然のことである。ただ、アマゾンと他の小売業との決定的な違いは、顧客が自らの興味、好み、そのときの状況に応じて「何を買うべきか」判断するのに役立つようにデータを生成することへのこだわりだと著者は強調する。たしかにそれこそが、プラットフォームとしての価値なのだろう。
もうひとつ、「なるほど」と感じずにはいられなかったのは、第2章 「『いいね!』はあなたを映す鏡」におけるプライバシーについての考え方だ。まず、ここでスタートラインと位置づけられるのは、私たちの祖先の時代だ。当時、人々は大勢で炉を囲み、村のゴシップに花を咲かせた。そこにはプライバシーなど皆無であり、そもそもプライバシーを誰も期待していなかった、あけっぴろげな時代だったというのである。
そののち都市への人口流入が始まり、社会的匿名性とプライバシーが誕生する。プライバシーは「権利」と考えられるようになり、それは法的保護の対象にもなっていく。
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