(2)アディダスの無神経メール
「おめでとう! あなたはボストンマラソンで生き残った!」
アディダスは、今年のボストンマラソンで完走した顧客を対象に、「生き残った」ことを賞賛するマーケティング用の電子メールを送った。メールのタイトルは「Congrats, you survived the Boston Marathon!」だ。
ボストンマラソンといえば2013年大会がテロに巻き込まれたことは記憶に新しい。ゴール付近で爆発があり、3人が死亡。数百人が負傷した。アメリカで映画化にまでされたほどのおぞましいテロ事件だ。
アディダスの送ったメールはそれを想起させる。確かにテロの記憶を呼び起こし、再発防止に努めたり、危機感を高めたりするのは重要だろう。しかし、さすがに不謹慎すぎた。
実際に、すぐさまSNSなどで反応があった。アディダスは謝罪した。にわかには信じがたい出来事だが本当の話だ。「Adidas Boston Marathon」などで検索してみてほしい。
いまだに続く人種問題
(3)ダヴの黒人洗浄問題
続いてアメリカの日用品メーカー、ダヴだ。今年10月、Facebookの公式アカウントに投稿された動画広告が問題になった。
ボディソープの宣伝を目的とした内容だが、黒人の女性がそれを使ったら、白人に変身するというものだ。笑顔の黒人女性が服を脱ぐと、その下ではきれいな白Tシャツを着ており、顔(というかその女性自身)はいつの間にか、白人女性のそれになっている。
いまだに続く、人種問題だ。ほんとうに、いまさら感がある。広告代理店のセンスを疑うものとなっている。案の定、非難が殺到し、ダヴが謝罪する騒ぎとなった。
もともと、広告表現は、このところ、さまざまな消費者にPRできるように、最大公約数をねらっていたはずだ。それに、多様性の表現を失念してはならない。しかし、前述のとおり、「いまさら感」がある表現がまかり通ること自体が、人種差別問題がいまだに根深いと教えてくれる。
これは「Dove black woman turning into white one」と検索してみよう。画像を見ていただけるとわかるように、黒人女性が奇妙なほど笑顔であることが、逆説的に不気味さを際立たせている。
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