(4)ペプシの政治活動広告
ペプシは今春、社会運動をCMで描いて炎上した。しかし、これが日本人にはきわめてわかりにくい。
街ゆくデモ隊がいる。そのなかに、一人のモデルの女性がいる。デモ隊は、警官が立ち並ぶ地点で足を止める。すると、その女性が、ペプシを一本、警官の一人に差し出す。
警官は、業務中だというのに、そのペプシの魅力に抗うことができず、ペプシを飲んでしまう。すると、その光景に、デモ隊から拍手喝采が起きる。すると、警官同士も笑顔で顔をあわせる。内容はYouTubeで「Black Lives Matter Pepsi」と検索してみよう。
実際の事件として、2016年にアメリカではルイジアナ州で黒人が警官に射殺された。そのとき、ある黒人女性が捨て身で、武装警官たちの前に立ち抗議をした。これは、人名「Ieshia Evans」と検索したら画像が検索できる。これはいまなお残る人種差別に抗議した、切実なものだった。
それにたいして、ペプシは、さすがに商業的すぎた。本来は政治的で、かつ、根深い差別ゆえに立ち上がった人たちを、ある種、揶揄するものとして受け止められた。これってパロディだろ? と感じてしまう人がいたとしたら、それは日本人ゆえかもしれない。
ミネラルウォーターなどの値段が数倍に
(5)アマゾンの値上げ
企業も、人々のインフラになってしまうと値上げ自体が批判の対象になっていく。
米国では今年9月、ハリケーンのイルマがフロリダを襲った。物流網がストップ、あるいは生産に多大な影響が出た。無数の住人たちは、食料品や、ガソリンの高騰に苦しんだ。売り手からすると、値上げしたい意図はあるだろう。ただし、米国・フロリダでは、生活の基礎となる商品を、このような緊急時に大幅値上げすることは違法としている。
しかし、このハリケーンが襲った際(ちなみに、襲来する以前から)、実際には3000を超える小売店がそれを見越して値上げをしていた。それはリアル店舗だけではなく、インターネット通販大手のアマゾンもそうだった。
ツイッターのユーザーたちは、アマゾンでさまざまな商品が通常価格よりも高くなっているとツイートし始めた。ミネラルウォーターなどが数倍になっている、などだ。
これでアマゾンを責めるのも難しい気はする。アマゾンを使って、小売業者たちが販売をしているからだ。ただアマゾンは、店舗の監査をおこない、実際に不当な便乗値上げを行う業者を取り締まる、とした。プラットフォーマーとしての責任を自覚したかっこうだ。
以上、5つの炎上事件を取り上げた。中身をみると、企業が不用意に、政治や差別につっこんだ点が理由にあげられる。
ひとつ違うのは、5番目のアマゾン炎上事件だ。これは、おそらくSNSがなかったら可視化もされていなかったに違いない。しかし、今では全員がスマホを持っており、スクリーンショットも撮れ、すぐさま共有できる。さらに、プラットフォーマーとして、すべてを監視するのは難しい。どうしても対応は後手になってしまいがちだ。
こう考えると日本企業にも示唆に富む話であるように私は感じる。読者は、炎上する消費者のほうがむしろ“やりすぎ”と考えただろうか。それとも炎上してやむなし、と考えただろうか。
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