悪しき体育会から脱却、日体大野球部の躍進 37年ぶりの日本一に導いた古城監督の改革

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2015年9月。古城監督が「チームを変えなければいけない」と決意する出来事があった。東海大とのリーグ開幕戦の始球式でのことだった。日体大の控え部員が応援席から「打っちゃえよ!」という野次を飛ばしたのだ。後になってその選手を含む一部の上級生が寮の規則を守っていなかったことも発覚した。

「下級生の頃は真面目にやっていても、上級生になるとよくない行動をしてしまう。そういう部員はほんの一部ですが、まわりの部員もそれを注意できていない。このままのやり方を続けていてもダメだと思いました」(古城監督)

古城監督は勝ち続けているチームから学ぼうとした。そんななか、目にとまったのが帝京大ラグビー部だ。日体大OBであり、帝京大ラグビー部を率いて大学選手権6連覇中(当時)だった岩出雅之監督の著書『負けない作法』を読んだり、密着したドキュメンタリー番組を見たりして、同部では上級生が雑用を引き受け、1年生は自分作りに集中する環境を整えていることを知った。

方針を理解させ、納得させて、浸透させた

「これを取り入れよう」と決めた古城監督は、2015年11月、新チームが立ち上がるタイミングで「体育会イノベーション」を打ち出し、部員たちに提示した。「昔は『やれ!』の一言でよかった。今の世代は理解して、納得しないと動かない」。古城監督は資料を作り、部員たちにプレゼンテーションをした。

新4年生にとっては「雑用係」に逆戻りすることになる。新3年生にとっては解放されると思っていた雑用をあと2年間も続けなければならない。古城監督は「新しい日体大の伝統を作ろう」と説いた。

指揮官の頭のなかには「3:4:3の法則」があった。「組織のうち、上位の3割は方針を理解し、積極的にやってくれる。下位の3割は方針に背を向けようとする。中位の4割はそのどちらでもない。この中位の4割を上位の3割にもっていくことで、下位の3割も考え方が変わっていく。方針を理解して一生懸命にやる人間を増やしていこうと考えました」。

古城監督はチーム全体へのプレゼンが終わったあと、当時の主将だった山中裕介(現新日鐵住金東海REX)らを呼び、「理解する人間を増やして、方針をチームに浸透させてくれ」と話した。一部の先輩のよくない姿を見ていた部員たちは「監督についていこう」と、反発はしなかった。

とはいえ、最初からうまくいったわけではなかった。2016年春のリーグ戦中には試合会場に到着後、バスを降りた下級生が道具を運んでいた。それを見た古城監督は「言っていることと違う」と叱責した。

「浸透するまで言い続けました。改革はゆるやかに移行するよりも、一気にやった方がいい。強引にもっていきましたね。その分、浸透するまでのスピードが速かったと思います」

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