大学教員をしているので、会社員の方たちよりは、若者の動向に敏感でいることができます。いま流行している若者言葉はなんと言っても「卍」ですよね。ただ、流行っていると知っているだけで、卍な話をすると、使い方はわからないのですが……。話についてこられないおじさんたちは置き去りにして先に進みます。
大学生の間では、11月下旬の段階で、すでに12月24・25日にアルバイトのシフトを入れるかどうかが話題になっていました。一般的には、若者の恋愛離れが進んでいると認識されているかもしれません。本当に恋愛に関心がなかったり、コスパが悪いなどと考えていたりするならば、クリスマスにバイトをしようがしまいがどうでもいいはずです。
しかし、現実には、少なくない大学生がクリスマスは恋人と過ごさなければならないというプレッシャーを感じています。クリスマスを1人で過ごす状態を意味する「クリぼっち」は、半分は冗談でありながら、もう半分は悲嘆でもあるのです。恋人が欲しいのにできないという悩みは、多くの若者に共有されています。
だから、恋人がいなくても気にする必要がないと言いたいわけではなく、どうして恋人が欲しいと思うのかを、一度、しっかり考えてみてもいいのではないかと提案したいのです。理由もわからないまま、ただ闇雲に恋人探しをしていれば、恋人ができることがゴールになってしまいます。それでは、仮に誰かと付き合えたとしても相手に失礼です。恋愛では付き合うことはあくまでスタートです。そこから2人でいい関係を築くための努力をする必要があります。
いわゆる草食男子・草食系男子
男性向けの恋愛情報を調べてみたようですが、自分が未経験の事柄について、マニュアルに頼るのは悪いことではありません。けんきょさんのまじめな人柄がうかがわれます。男性向けの恋愛情報にしっくりこないのは、いわゆる草食男子・草食系男子と分類されるような性格をしているからではないかと思います。
『草食系男子の恋愛学』(2008)の著者である哲学者の森岡正博さんは、男性向けの恋愛マニュアルについて、次のように言っています。
「世の中には、モテる男になるための本が、たくさん出版されている。それらを調べてみて、私はとても暗い気持ちになった。なぜなら、いかにすれば数多くの女性とセックスできるかを説明するものや、単に女性の側のわがままを並べるものが目立ったからである」
下手な鉄砲も数打てば当たる方式で強引に誘えば、女性とセックスできる確率は上がるかもしれません。けんきょさんのような男性にとって、このような価値観に基づいた肉食系男子的なアドバイスが参考にならないのは当然です。慰めるようなことが書いていないのは、男は競い合い、傷つくことで「強くなる」と肉食系男子が考えているからでしょう。「男の世界」では慰めなど不要なのです。
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