「高齢化社会は食の市場が30年成長し続ける」 シルバーライフ社長にロングインタビュー
村上:スケーラビリティが価格競争力を生んで、それが参入障壁になるということですか?
清水:そうですね。まず販売規模がないとランダム生産の工場ではラインが維持できないので、まず販売規模を作らないといけないわけですが、すでに我々が低価格の販売網を全国に拡大したあとなので、今から同じような規模を作るのは難しいと思います。我々も10年前は550円で弁当を提供していたのが、スケールメリットで現在は450円でできるようになっているんです。そこに今から参入するのはかなり難しいですね。
村上:他の差別化要因は考えられないんですか?
清水:日常食の業界では、外食系のようにいわゆる付加価値戦略、ブランド戦略、差別化戦略はほとんど通用しません。肉じゃがはどこが出しても肉じゃがで、そこに付加価値をつけてストーリーをつけて高く売るということは難しいんです。
朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):シニアビジネスというと豪華列車のようなラグジュアリーなものを想像しますが、現実には逆側のほうがほとんどということですね。
清水:前期高齢者(65歳から74歳の方)の場合は、ラグジュアリーな戦略もありますが、我々のメインとなる後期高齢者(75歳以上の方)に対してはまた違った切り口が必要になります。
後期高齢者の方たちは、おカネの使い方が保守的で、おカネをとにかく使いたくないんです。自分が何歳まで長生きするかわからない、いつ病気して入院するかわからない、定期収入はごくわずかのおカネしかない、そういう状況ですと、怖くて1円でも使いたくないと思ってしまいます。第一優先が医療費で第二優先が食費なので、そういう人たちに付加価値戦略で売るといっても難しいんです。
スケールがあれば他社は入ってこられない
小林:伸びる市場だということは、競合が参入してくる市場だということでもあると思うんですが、競合はどのような状況なんでしょう?
清水:ある程度工場も作ってやっていこうというプレイヤーも現れています。しかし、その中でも我々が最も勢いがあって伸びています。今までほとんどが地域の小さなプレイヤーだったところに、我々のようなチェーンが現れて、スケールメリットを活かした販売価格でシェアを伸ばしているという状況ですね。
小林:そういう状況で、競合として思いつきそうなのは給食のような業態ですが、そういったプレイヤーが入ってくることはないんでしょうか?
清水:過去に何回も入ってきていますが、うまく行かず撤退していっています。実はこの事業は店舗の経営を成り立たせるのが結構難しいんです。需要はあるので売上は立つんですが、配送コストが高くつくので、事業としてなかなかペイできないんです。そこをペイさせるために、どのような店舗づくりをし、どのようなルート作りをすればいいかというノウハウを我々は持っているので、それを加盟店さんに提供できるということが一つの差別化要素なのかもしれません。
小林:弁当製造業から来るとラストワンマイルができず、逆にラストワンマイルを持っている人は製造のノウハウが無いということなんですね。よくわかりました。
朝倉:新聞配達に近いとおっしゃっていましたが、朝日新聞は出前館と業務提携して、飲食店の宅配代行などをしていますね。