「高齢化社会は食の市場が30年成長し続ける」 シルバーライフ社長にロングインタビュー
清水:そういうわけではなく、その時期に関東工場を作り、第2のメニュー群を作ることができたので、第2のメニュー群の生産を増やして小売を上げるために新しいブランドの店舗を意識的に増やしていったという背景です。
村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):2ブランドで展開されているのは、ユーザーの視点から見て、「選べる」価値を感じてもらうことを狙ってのことですか?
清水:そうですね。この、まずシェアを取っていくという戦略は、今から40年くらい前の国内向けマーケットで伸びた会社はみんなやっていたことです。マーケット全体がどんどん伸びていくときには有効な戦略だからです。この戦略は、マーケットが頭打ちになっていくと通用しなくなっていくんですが、今の我々の業界は40年前の国内向けマーケットとほぼ同じ環境なので、この戦略でやっています。そのころのダイエーさんやすかいらーくさんの戦略も参考にさせてもらっています。
独自に必要な要素とは?
小林:高齢者向けの食を展開するにあたって、一般向けの食、たとえばコンビニ系列の弁当製造会社に必要なリソースとは違い、独自に必要な要素は何でしょうか?
清水:販売面と製造面で違う能力が必要になります。製造面から言うと、我々の持っている工場は配食サービスの業界に専門特化されたかなり珍しい工場です。一般的な食品工場では大きな機械が同じものを大量に生産することで一個あたりの単価を下げます。しかし、我々の配食サービスは日常食で、毎日出すものがまったく違っているのが望ましいので、それに最適化した。日々まったく違うものを作る工場が必要になります。しかも、それを適切な単価で出せる工場です。そのような多品種ランダム生産の工場は、非常に効率が悪いので、あまりこのような工場は日本にはありません。
そのことは、販売面で必要になることにもつながります。多品種ランダム生産の工場で、適切な単価で生産するためには、販売規模がないといけません。だから我々はまず店舗網を作り、販売規模を作り、工場を後から販売規模に合わせて作るということをやってきたんです。モデルとする工場がほとんどなかったので、かなり苦労しましたが、私自身も4ヶ月くらい工場に泊まり込んで一から全部工程を組み直して、なんとかノウハウは作ることができました。