日テレ「先僕」が描く、学校のリアルな課題 「HERO」「龍馬伝」の脚本家・福田靖氏に聞く

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――一方、主人公はビジネスの論理を学校に持ち込むものの、うまくいかない経験を何度もしています。第1話で蒼井優演じる真柴先生が「こうしませんか? 校長先生は学校経営を、ビジネスのことだけを考える。私たちは生徒のことを、教育のことだけを考える」と言うシーンは印象的でした。

こっち(ビジネス側)は(学校の先生を)どこか上から見ている部分がある。ドラマの中で鳴海校長は「なんてコスト意識が低いんだ」とか「先生はぬるい」などと言います。学校の先生は生徒の授業料から給料をもらい、そして仕事はいい生徒をつくって社会に送り出すことと考えている。

2018年秋のNHK朝ドラ「まんぷく」の脚本を担当することも決まっている(撮影:今井康一)

「先生にとって生徒はクライアントであり商品なんです。保護者は株主です」というせりふがその表れです。そんな態度で受け入れられるわけがないけれど、(不遜な態度を)主人公もわかってない。

そういうビジネスマンと教員のぶつかり合いによって起こる化学反応をドラマで表現したかった。両者が衝突する中で、だんだんお互いに影響されて歩み寄っていき、自分たちの目標は何かがわかっていく、というストーリーにしようと考えました。

教育現場と社会では「答え」が異なる

――なるほど。実社会で大切にされていることと、教育の世界の中で大切にされていることの本質的な違いによる葛藤もありましたよね。

たとえば、ドラマでデジタル万引き(コンビニなどで雑誌やマンガの中身を盗撮すること)を取り上げた回があります。取材のなかで先生から「デジ万ってご存じですか?」と聞かれて知りました。

デジ万をする生徒は、犯罪だという意識がまったくないそうです。でもやられたらコンビニの店長は頭にくるわけですよ。店長の考え方次第では警察に突き出されます。その先生に「デジ万をした生徒がいたらどう指導します?」と聞いてみました。すると、こういう答えが返ってきたんです。

「どうせ高校生は著作権がどうのと言って説得したって、『悪いことをした』とは思わない。だから、まずそれが犯罪だということを認識させなければいけない。そのために、まず『お前、写メ撮ったんだって? それ犯罪だぞ』って言う。生徒は『僕、やってません』って言うから、『じゃあ携帯電話見せてみろ』って言う。そしたら絶対高校生は『先生に何の権利があって見せなきゃいけないんですか?』って言ってきます。

そしたら『だって、お前は罪を犯したかもしれないからだよ』って言って、『ちょっと待ってくださいよ、電源入れるから』とかなんとか言ってくる。僕は『わかった、わかった。じゃあ後ろ向いているあいだに電源入れろ』と言って後ろを向きます。すると、その間に生徒は絶対に撮影(デジ万)した画像を削除しますよ。で、削除された携帯電話を見て、『先生の勘違いだった。申し訳ない』と、手をついて僕が謝るんです。生徒は『ああ、いいっすよ』って言うから、『その代わりな、勘違いされることするなよ。これは犯罪だからなと言って返します。これで一件落着ですよ」

こんなやり方は教育現場の人しかわからない、すばらしい!と思いました。このエピソードもそのまま使わせていただきました。

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