友人を勧誘する「引き抜き」は法的にアリか 元同僚を紹介、リファラル採用のリスクは?

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「退職後であっても、常軌を逸するような社会的に不相当な引き抜き行為は、不法行為に当たる場合があります。

例えば、

(1)繁忙期を狙ったり、引き抜く人数が大量または一斉であったり、会社幹部等の重要人物の引き抜きまたは会社幹部自身が新会社を設立して元同僚の大量引き抜きを行う等、業務に重大な支障を生じさせる引き抜き行為

(2)会社の悪評を伝えたり、転職の対価として賄賂を渡したり、社員しか知り得ない機密情報を利用した勧誘方法

(3)引き抜かれる労働者に営業情報や秘密情報を持ち出させたりする引き抜き行為

などが考えられます」

退職者を懲戒解雇の対象にすることはできない

リファラル採用で採用された側は、どういったことに気をつけたら良いでしょうか。

「1点目は、引き抜かれた者に対して前の会社が懲戒解雇処分を行ったり、退職金を不支給にしたりすることがあるかもしれません。

しかし、この点も、前記の通り、労働者には退職の自由や、職業選択の自由があるため、引き抜きに応じただけでただちに懲戒解雇の対象にすることはできないと解釈すべきです。また、退職金不支給についても、退職金規程に不支給条項があり、かつ、上記のような悪質な事例でなければ、不支給は難しいと考えるべきです。

2点目は、口頭説明や口約束だけではなく、労働条件や雇用契約について書面化することが労使ともに大切だという点です。

リファラル採用では、知人同士の勧誘という信頼関係があるからといって、労働条件を口頭説明だけで済ませたり、入社が口約束になってはいけません。

もし口約束だと、実際の入社後に話が違うとトラブルになったり、そもそも採用自体が何の証拠もないため、会社が一方的に採用を取り消す危険性もあります。そのため、雇用契約書等で労働条件を書面化して紛争を予防することも大切です」

山田 長正(やまだ・ながまさ)弁護士
企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。
事務所名:山田総合法律事務所

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