半沢直樹もたまげる、究極の「出向先」 大手70社が出資・賛助する、"追い出し部屋"の正体
出向先:株式会社 関東雇用創出機構(※編集部註:当時の社名、現在は日本雇用創出機構)
所在地:東京都千代田区
形態 :FSLに在籍のまま、他企業に勤務し、その指揮・命令・監督を受けて業務に従事する
業務内容:①自身の転職に向けた再就職活動
②再就職活動中の給与・賞与は100%支給し、
再就職支援会社への手数料は会社負担とする
期間 :半年間。但し、再就職先が決定した時点で会社都合退職とする
(やむを得ない場合は出向期間を延長することがある)
目を疑った。これが意味するのは出向先への“片道切符の島流し”、つまるところ事実上の退職勧奨ではないか――。松木さんはその場での承諾を避け、会社側に再考を訴えた。だが、会社の方針は覆らない。その後も直属の部長や人事部長、取締役などと、約3カ月、延べ20回以上にわたる面談が続いた。「君は勤務成績が悪い。10月にオフィスを移転する予定だが物理的にも君の席はない」などとも伝えられた。
前後して社内で同様の出向を命じられた同僚が、複数いることも知った。「納得いかない面もあるが、自分は転職も考えていたので承諾した」。ある同僚は言った。しかし、松木さん自身は会社を辞めることなど望んでいない。成績が悪いといっても、松木さんは間接部門に在籍しており、評価基準や業績への貢献度も分かりづらい。そもそも、こんな形態の出向など聞いたことがない。
「異議をとどめて、現地に赴く」
松木さんは最後まで抵抗を試みたが、最終的には業務命令違反で自分の立場が不利になることを避けるため、「納得も合意もしていないが、業務命令なので、異議をとどめて、現地に赴く」との文書を会社に渡し、関東雇用創出機構へ出向した。2011年10月のことだ。
関東雇用創出機構のオフィスでは、自分専用のテーブルとパソコンを貸与された。カウンセラーとして常駐している関東雇用創出機構の社員から、履歴書の書き方や面接の注意事項などが記された資料を受け取り、時には助言なども受けたが、「インターネットで転職情報サイトに自分で登録して、転職先を探して自分で面接に行くなど、転職活動は基本的に自分が主体で活動することが前提でした。求人情報の一部提供はあったが、転職そのものを仲介されるようなことはなかった」と松木さんは振り返る。スキルアップを図る研修を受けた記憶はない。