半沢直樹もたまげる、究極の「出向先」

大手70社が出資・賛助する、"追い出し部屋"の正体

日本雇用創出機構はもともと「『中高年人材の雇用創出』を目指して」(パソナグループ広報室)、前身となる関西雇用創出機構(2002年)、関東雇用創出機構(2003年)がそれぞれ設立され、そこに賛同した大手企業が出資した経緯がある。「豊富な知識や経験、技術等を持つ企業の定年退職者や中高年人材の活躍の機会を広げることを目的に、『人材ブリッジバンク事業』や、『特別選考技術調査推進・支援事業』、『ビジネスサポート事業』など、様々な事業を通じて、人と企業を元気にするプラットフォームの構築に取り組んでいます」(パソナグループ広報室)とはパソナ側の説明だ。

ただ、ある株主企業の人事担当役員は、「あまり積極的に付き合っているワケではない。当初は大手企業同士の中高年人材を融通するような枠組みを進めようとしたが、うまく行かず、立ちゆかなくなってパソナが主導して再編した。その際に出資金の300万円は減資されて今は1円相当になっている」と明かす。

大手70社従業員の大半は存在を知らない?

出資時と違って、現在の日本雇用創出機構の人材ブリッジバンクが、どんな使われ方をしているのかを、詳しく知らない株主企業の関係者は多い。名だたる約70社の大手企業従業員のうち、人事部門担当者以外は、名前も聞いたことのない人が大半と推測される。

人材ブリッジバンクを利用している企業の中でも、“追い出し部屋”のように使わずに、労使合意の下、円満に活用されている例もあるだろう。企業によっては希望退職を募る際、再就職支援の選択肢の一つとして利用した例もある。ただ、「利用を希望した人は少数派だった」(ある株主企業の関係者)。この枠組みは慎重に扱うべきで、乱暴に使うと深刻な労使紛争を招きかねない。表に出てきていないだけで、富士電機グループやアルバック以外にも、トラブルが隠れているかもしれない。

リストラは一般的に承認されている経営の立て直し手段であり、それ自体は悪とは言えない。整理解雇も条件を満たせば適法である。その際に、日本では解雇に関する訴訟は長期化しがちであり、結局争いになると一件一件、社会的相当性の有無などを判断せざるをえず、会社にとっては有効か無効かの予見可能性がない。

その点で、大企業が“追い出し部屋”のような法の抜け道に走ってしまうという面はある。“追い出し部屋”についても、いきなり解雇せずに温情を与えているという反論もある。それでも、従業員の心を無視した不当なリストラが許されていいはずはない。人材ブリッジバンクの存在に驚いた読者が大半のはずだ。

「出向」というキーワードを、世の中に広く認知させた大ヒットドラマ『半沢直樹』は、池井戸潤さんが描いた小説「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」(文芸春秋)が原作だ。事実を基にしているといっても、これはフィクション。出向についても脚色した部分もあるかもしれないが、現実世界では、退職させるための転職活動を業務命令として、半ば強制的に外部企業に送り込む、という何とも奇怪に映る出向が存在する。「事実は小説よりも奇なり」ということわざは、まさにそのとおりである。

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