半沢直樹もたまげる、究極の「出向先」 大手70社が出資・賛助する、"追い出し部屋"の正体
本社は東京都千代田区大手町2丁目。JR東京駅・日本橋口からほど近い場所にある、真新しいビル。前面は緑の植物で覆われている珍しい装いだ。人材サービス大手の一角、パソナグループの本社と同じであり、日本雇用創出機構はパソナグループ代表の南部靖之氏が会長を務めるパソナの子会社なのである。
FSLから松木さんが出向した枠組みを、日本雇用創出機構は「人材ブリッジバンク事業」と名付けて展開している。同機構の親会社であり、取材対応の窓口となるパソナに人材ブリッジバンクの詳しい中身について書面で尋ねたところ、「会員企業の従業員で希望される方を出向社員として迎え、カウンセラーによるアドバイスや様々な求人情報を提供することで転職を目指していただきます。出向期間終了日までに転職をされなかった場合、もしくは転職する意思がなくなった場合は、出向元の企業に帰任いただくことが原則となっています」(パソナグループ広報室)との回答が返ってきた。
また、一部でまるで追い出し部屋のアウトソーシングのように指摘されている点について見解を聞いたところ、「このようなご指摘をされることは誠に遺憾です」(パソナグループ広報室)との返答だった。確かに会社や仕事に対する考え方は人それぞれであり、このような形態での転職や再就職を望む人はいるかもしれない。
アルバックの「出向」をめぐってもトラブル
ただ、人材ブリッジバンクについては、半導体製造装置大手アルバックをめぐっても、直近でトラブルが生じた事例がある。神奈川県茅ヶ崎市に本社を置くアルバックは、人材ブリッジバンクを活用して、10数人の社員に日本雇用創出機構への出向を命じたが、それに一部の対象者が強く反発する騒ぎとなった。
出向の一部対象者は横浜に法律事務所を構える岡田尚弁護士に相談。岡田弁護士は、アルバックの労働組合を通じて、神奈川県の労働委員会に企業内での労使問題の仲裁を目的とする斡旋手続きを執った。どのような話し合いが行われたのかの詳細は不明だが、アルバックはその後、当該の出向を打ち切った。岡田弁護士は東洋経済の取材に、「追い出しに手を貸すなんて、パソナのような企業がやるべきことではない」と話している。