リカレント教育が当たり前になっている諸外国では社会人になって一定の時間を経過したあとに、正規の学生として学校に戻ることも日常的にあります。文部科学省の調査によると大学入学者のうち25歳以上の割合は、OECD各国平均で約2割に達し、社会人学生も相当数含まれます。一方、日本人の社会人学生比率はわずか1.9%。
さらに「社会人&学生のための大学・大学院選び2017年度版」によると社会人学生は人数的には毎年1万6000人強で伸び悩んできました。
以前の記事でも書かせていただきましたが、このように日本ではリカレント教育が定着していないのが実情です。人材開発は会社が行う学びに依存。終身雇用、年功序列の風習に則って、階層別・入社年次別に役割を理解するための教育プログラムが中心です。たとえば、入社3年目であれば、職場のリーダーとして後輩に働きかける能力を向上させる研修が行われるなどといったことです。
あくまで、現状の延長線上でキャリアを描くのが前提の学びです。残念ながら、変化への適応や新しいキャリアを確保するプログラムはほぼありません。
「仕事せずに学ぶ期間=ブランク」と否定的
ならば自分でキャリアを中断して、新たなキャリアのために学びの機会をつくったら、どうなるか? むしろ、自分の可能性を狭める可能性のほうが高いのが実情でした。たとえば、取材した広告代理店に勤務しているSさん。社会人として4年間仕事をしたあとに、大学院で法務を学びました。約2年間は学業に専念したわけですが、その後の就職活動が一苦労。転職エージェントに登録してみたところ、
「2年間のブランクは大きいですね。大学院で法務を学んだといっても、実務経験がないのですからキャリアにはなりません」
と冷たい対応。半年以上経過しても、1社の就職先も紹介してくれない状態でした。同世代の友人たちもSさんの選択には冷ややか。反対まではしないものの「自分にはできない」「お前は変わっているから」とSさんの“異端さ”を指摘します。上司も友人たちと同様です。Sさんの上司であるDさんは、
「20代は職場で仕事をして経験を積むことが重要。2年間のブランクを埋めることは簡単ではない」
と、やや否定的な意見です。このように仕事せずに学ぶ期間=ブランクで、失うものが大きいと判断する傾向が日本の職場にはあります。ゆえに有給の教育訓練休暇を導入している企業はわずか。
有給教育訓練休暇とは就労中の労働者が教育訓練を受けるために、一定期間、有給で職場を離れることを認める休暇制度。フランスやベルギーなど欧州では有給教育訓練休暇の実施を法制化している国がたくさんあります。しかし、日本の企業で有給教育訓練休暇を導入している会社は1割もありません。
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