金融市場の「不穏な動き」に備える投資の知恵 次のターゲットは「債券」「為替」?それとも?

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しかし、直近では経済成長率がやや減退するのではないかと予想されている。

にもかかわらず、ムーディーズがインドの債券格付けをグレードアップさせたということは、インド債券の信用度が増すとみているわけだ。

その背景には、現在インド政府が取り組んでいる「物品サービス税(GST)」の導入がある。インドは、各州の力が大きく、州によって税率が異なるなど、インド経済の生産性向上の障害とされてきた。GSTの導入によって、流通面などにもプラスとなり、2~3年後には生産性を向上させるのではないか。長期的スタンスで見れば、米国や中国に投資するよりも、インドの期待値が高いのかもしれない……。

あるいは、先月行われたトランプ米大統領のアジア歴訪で、トランプ大統領はアジア歴訪の最後を締めくくる「東アジアサミット」を欠席した。これは、東アジア地域のドンは中国であることを大統領自身が認めたことを意味する、と見る専門家も少なくない。北朝鮮問題は別にしても、アメリカ第一主義を唱えるトランプ政権が続く限り、東アジアをめぐる経済の力関係は大きく変化するかもしれない。

米国と中国、どちらに投資するのかと言われれば、中国と考えるのが「先の先を読む」投資法とも言える。

市場の歪みをターゲットにした投資法

④「市場の歪み」に目を向ける

伝説のカリスマ投資家「ジョージ・ソロス」が信奉した投資哲学は「再帰性理論」と呼ばれる考え方だ。市場が大きく動くとき、市場には歪みが生ずる。市場の歪みはいずれ再帰する、という考え方で、市場の歪みをターゲットにした投資法だ。

ソロス氏が、自ら設立したヘッジファンド「クォンタム・ファンド」を使って、英国ポンドに「売り」を仕掛けて中央銀行である「イングランド銀行」に勝ったケースはあまりにも有名だ。

当時、欧州は「ERM」という目標為替相場制を採用しており、欧州通貨に連動していた英国ポンドは割高になっていた。ソロス氏は、その「歪み」に着目して世界中のヘッジファンドなどにポンド売りを呼び掛けた。最終的にイングランド銀行は、1日に2度の公定歩合引き上げで対応せざるを得なくなった。

トランプラリーにも、当然のことながら市場の歪みが生じている。トランプ大統領の「大型減税」と「米国第一主義」のスローガンだけで、実力以上に米国株は上昇し、ドルも買われてきた。相乗効果で、新興市場も含めて世界的に株高になっており、ドルと連動する通貨は必要以上に上昇している。

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