米国の民主主義を脅かす4つの「構造的脅威」

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米連邦議会を信頼している人の割合は9%を下回っている(写真:James Lawler Duggan/ロイター)

トランプ氏が大統領に選出されて約1年、米国の民主主義が苦境に立たされているのは明らかだ。連邦政府が正しく機能していると考える米国人は、わずか20%。連邦議会を信頼している人の割合は9%を下回った。

一方、州政府や地方自治体は、今も多くの有権者から信用されている。多くの州や地方自治体で、民主主義を強化するための改革が行われているからだ。ありがたいことに、こうした改革のいくつかは、国政への波及効果を持っている。連邦議会の議員選出プロセスを改善するものだからである。

政治家が有権者を選べる制度

州や地方の改革は、米国の民主主義を覆う4つの構造問題に焦点を合わせている。ゲリマンダリングと呼ばれる区割り問題、予備選挙の制度的欠陥、政治とカネの問題、超党派の協力を難しくする立法プロセス、の4つだ。

1つ目のゲリマンダリングとは、与党が自らに有利になるよう選挙区の区割りを変更するもので、有権者が政治家を選ぶのではなく、政治家が有権者を選ぶことを可能にしている。起源は1812年と古いが、これが完成を見たのは、ここ数十年。主に共和党が多数派を占める州で問題が深刻化した。

仮に、独立した第三者によって区割りが行われたとしても十分ではない。同じ政党を支持する有権者が同じ地域に固まって住んでいること(=2つ目の「予備選挙の制度的欠陥」)があるからだ。

この問題に対処するには、ある政治学者が推奨するように、党予備選挙の候補者数を増やし、優先度順にランクづけしながら複数の候補に投票できる仕組み(RCV)を導入し、より広範な有権者の声を選挙結果に反映させる必要がある。RCVは複数の市に加え、メーン州でも導入済みであり、引き続きの普及が望まれる。

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