「ながら運転」で命を落とす人が出る真の理由 情報過多の中で「気を散らさない」6原則

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スミスの件も、ブリティッシュ・エアウェイズの件も、原因はブラックベリーやツイッターではない。重要な会議で集中できず、手にした携帯を置いて相手の目を見つめられない脳にある。情報に圧倒され混乱してしまっているのだ。

私たちの共著『ハーバードメディカルスクール式 人生を変える集中力』でも詳しく解説しているが、注意散漫がもたらすリスクの影響は、家庭や職場で実感でき、一人ひとりの健康状態にも反映されている。注意散漫にかかわる残念なデータを、ほかにもいくつかあげてみよう。

・米国人の43%が自分は段取りが悪いと感じ、21%が仕事の重要な締め切りに遅れている。約半数が、段取りが悪いせいで毎週2回以上残業すると回答している。

・ファイナンシャルプランナーを対象とした調査では、目標達成に取り組みながらも時間管理が下手で自制心が足りないせいで、63%が健康問題を抱えている。過大なストレス、健康悪化、低い業務管理能力の間には直接的な相関関係が見られる。

・米国人の48%が、この5年間に生活上のストレスが増えたと感じている。約半数は、ストレスが公私両面に悪影響を与えていると回答。社会人の約3分の1(31%)が、仕事と家庭の両立に苦労しており、3分の1以上(35%)が、仕事のせいで家族との時間、自分の時間を奪われることを、大きなストレスの原因にあげている。

・ギャラップ世論調査では、働く人の80%が仕事でストレスを感じると答え、約半数がストレス管理法を学びたいと回答している。42%は、同僚がストレスに対応するため手助けを必要としていると回答した。仕事のストレスは、従業員の病気や怪我、保険料の上昇、経営者の生産性低下などさまざまな問題につながるおそれがある。

・米国疾病予防管理センターによると、現在米国の医療費支出の80%はストレスに関連している。

・働く人の70%が、残業や休日出勤をしている。半数以上がその理由として「自分に課したプレッシャー」をあげている。

命よりも1本のメールを優先させる人々

中でもある種の不注意はいまや、現代社会を象徴するものとなっている。

それは「ながら運転」である。米国運輸省がこの問題のため開設した専用サイト(distraction. gov)を見れば、「ながら運転」の危険性に気づかされる。「ながら運転」といえば携帯メールを連想しがちだが、通話しながら、テレビを見ながら、地図を読みながら、または道路や車から目を離すほかの行動をとりながらの運転なども含まれる。

運輸省の統計によると、「ながら運転」の増加とそれがもたらす影響は、驚くべきものだ。

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