12月は日米欧中銀ともに政策決定会合がある。定例会見は13日のイエレンFRB議長、14日のドラギECB総裁、21日の黒田日本銀行総裁の順番で、年内は残り1回ずつだ。ここでは、筆者が選ぶこの3人の2017年の名言を紹介する。まずは、イエレンFRB議長の名言は前述の通り、「ペンキが乾くように、静かに進めていく」(6月14日)、「現在の2%を下回っている物価はミステリーだ」(9月20日)、の2つを挙げたい。
次にドラギECB総裁は、シントラの一撃と揶揄された「デフレ圧力はリフレに変わった」(6月27日)。この発言後、独10年債は0.25%程度から7月12日に一時0.62%近辺まで上昇し、ユーロ・ドルは9月8日に一時1.2ドル台まで上がった。出口について早く語り過ぎると、意図せざる金利上昇や通貨高を招き、実体経済にも悪影響を及ぼしかねない。
結局、ドラギ総裁は自らのタカ派発言による市場の混乱収拾のため、7月20日の会見では慎重な言い回しにならざるを得なかった。繰り返した言葉は、「我々には、粘り強さと忍耐が必要」だった。「粘り強い」といえば、黒田日銀総裁の専売特許かと思いきや、緩和継続姿勢を示すためには、使わざるをえない言葉のようだ。それでも、欧州は日米に比べて原油価格変動の川下の物価へのタイムラグが短いこと、さらには秋にユーロ高が一服したことなどから、物価上昇は日米に比べていちばん速くなり、来春には変化の兆しがあるかもしれない。その点は留意したい。
スイスで珍しく副作用を語った黒田総裁
最後に黒田日銀総裁だが、今年は政策変更もなく過ぎたこともあり、印象に強く残る言葉がすぐに浮かばずに終わってしまうと思われた。そんな矢先の11月13日のスイス講演で、海外識者が唱える「リバーサル・レート」という議論を引用。その上で、「低金利環境が金融機関の経営体力に及ぼす影響は累積的なもの」と指摘し、「こうしたリスクにも注意していきたい」と副作用に配慮する姿勢を示した。
黒田総裁は2016年1月にマイナス金利導入を決定、春までは強気な発言を繰り返した。昨年9月の総括検証時には副作用を認めて、YCC(イールドカーブ・コントロール)の導入を決定。その後は静かな時間が続いていただけに、今回の海外講演での発言はやや意外だった。
中曽副総裁もそうだが、日銀執行部の海外講演は白川方明前総裁の香りがする。来年4月以降の新体制に向けて、枠組みを見直す(長短金利操作目標の微修正)ための地ならしとの解釈もできなくはない。しかしながら、コアCPI(消費者物価)上昇率がまだ1%に到達しない状況では、まだ頭の体操だ。
10月会合では片岡剛士委員が「15年金利を0.2%未満に誘導するべき」と追加緩和を主張して、執行部案に反対意見を出した。これに対して、効果と副作用をバランスよく考える委員の意見もあった。このタイミングでの総裁のコメントという点では、追加緩和のハードルは高いという認識が大勢であることを、海外向けに講演で伝えたかったと推察される。筆者は12月7日、黒田総裁のきさらぎ会講演に参加予定であり、今から国内向けの発信がとても楽しみだ。
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