今年も残り40日となり、ラストスパートだ。歴史に残る2017年の重要イベントは、FRB(米国連邦準備制度理事会)が金融政策の正常化を進めたことだろう。
まず3月時は、FOMC(米国連邦公開市場委員会)開催の約2週間前となる2月下旬にメンバーの相次ぐタカ派発言で、一気に利上げを市場に織り込ませた。当時、確かにソフトデータは大幅に改善していたが、生産や消費(特に自動車販売の低迷)というハードデータを着実に押し上げるまでには至っていなかった。従来の石橋をたたいて渡るイエレン議長にしては、2016年12月の利上げからわずか3カ月での追加決定は、利上げを急いでいる印象を与えた。今振り返っても、議長任期を意識しつつ(この時点で辞める覚悟があった)、正常化を早めに進めたように思えてならない。
イエレン議長の見事な舵取り
6月時には利上げ継続路線を貫きつつ、バランスシートの縮小計画を公表。イエレン議長は「市場が用意できるようにするための取り組みの一歩だ」と語り、「ペンキが乾くように、静かに進めていく」と強調した。3年程度で資産の3兆ドル割れがイメージされるが、その後、市場を混乱させることなく、見事な舵取りだった。
9月時には、再投資政策の縮小を10月から開始することを全員一致で決定。ハト派からの反対もなく、用意周到さが実を結んだといえよう。ただし、イエレン議長は会見で「現在の2%を下回っている物価はミステリーだ」と述べ、物価停滞に納得できる理由が見当たらない苦悩が垣間見られた。
それでも市場は、残す12月FOMCでの利上げを織り込み済みだ。金融正常化は軌道に乗ったといえる。来年2月3日でイエレン議長は任期満了となっても、金融正常化に対するやり残し感はないように思える。あるとすれば、ミステリーな物価低迷が、実際に上昇していく姿を見ることではないだろうか。
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