三越・伊勢丹 経営統合交渉の見えない終着点
三越と伊勢丹の経営統合交渉が浮上したが、両社の温度差も目立ち始めた。本当に交渉は成立するのか。破談となった場合、厳しい立場に追い込まれるのは、ジリ貧の三越だ。(『週刊東洋経済』8月11・18日合併特大号より)
「この段階でなぜこうした報道が流れているのか不審だ。どうやら出どころは一つらしいね」--。伊勢丹の幹部は過熱する報道に戸惑いを隠さない。大手百貨店同士の新たな再編劇として浮上した伊勢丹と三越の経営統合交渉。両社が提携を目指して交渉を持ち、その中で三越が経営統合を申し入れたというのは確かなようだ。
だが、両社の間には明らかに温度差がある。別の伊勢丹幹部は強い口調で語る。「われわれの手法は説明します。聞きに来られた方にはどなたにも。しかし、それを強要することはしない。名鉄さんや東急さんのように、取り入れるのはご自身の判断だから」。この幹部の念頭にあるのは、名鉄百貨店と東急百貨店との間で締結した業務提携だ。発言からは、三越との間でも業務提携レベルしか考えていないように受け取れる。
「勝ち組」である伊勢丹は連結売上高こそ業界5位だが、新宿本店の収益力は国内随一。他社に先駆けて導入した商品情報システムを駆使し、つねに最先端のファッションを発信してきた。同社はシステムを他社に提供、業務提携を広げてもいる。支援先の丸井今井や岩田屋では業績が回復を見せている。先の2社もそうした提携先に入る。
「システム統合は伊勢丹にとって最もおいしいフィービジネス。収集データの範囲は拡大するし、情報提供料も取れる」と競合百貨店の幹部は見る。伊勢丹にとっては、経営統合までせずとも、システム統合による提携で十分メリットを享受できるわけだ。