三越・伊勢丹 経営統合交渉の見えない終着点
ジリ貧・三越の焦り
三越との統合が仮に実現すれば、確かに合計売上高は1・5兆円を超え、国内最大の百貨店グループとなる。だが、百貨店にとって経営統合が体質強化の切り札かというとそうでもない。日本の百貨店は商品の8割は委託仕入れ、しかも各支店が独自に品ぞろえする個店主義が強い。スケールメリットは限定的だ。確かに伊勢丹にも弱みはある。苦戦する地方店も多く、過度な本店依存体質を断ち切れていない。とはいえ、現況を見るかぎり、同社が事を急ぐ必要性は感じられない。
今回の統合交渉は三越が救済を求めたという色彩が濃いように映る。というのも、老舗中の老舗で盟主の座にあるものの、同社はバブル崩壊後、ジリ貧の一途にあるからだ。2年前には赤字の地方4店を閉鎖。その後も、スリム化のため子会社清算を進めた。一方、粗利率向上のためセール中止という思い切った策を打ち、主要店舗では大型の改装投資を実施した。
だが、施策は裏目に出るばかり。今や営業利益水準は、伊勢丹や大丸の半分以下。石塚邦雄社長が「数値達成が経営としての責任」と増益を狙う今期も、第1四半期は前年同期比6割の減益とつまずいた。元三越幹部は話す。「少なくとも3月時点での石塚社長は『(再編について)少しずつ考えなければ』と話していただけで、具体的な話がある様子はなかった。3カ月後にこのようになるとは」。三越の焦りが見え隠れする。
膨大な土地の含み益がありながら、三越の株価は低迷。買収の標的とされているとのうわさが絶えない。長年のライバルに救済を求めたのは「見知らぬ会社に買われるよりマシ」という買収防衛の一面があるのかもしれない。同社は資金面での不安も抱える。大阪・梅田店の開業が目玉となる6カ年計画では、1800億円の投資を見込むが、現在のキャッシュフロー水準では確保できるのは1000億円程度にすぎない。その差をどう埋めるか、だ。
いずれにせよ、統合交渉の先行きは予断を許さない。仮にご破算になった場合、ダメージを受けるのは一方的に三越、ということは確かだ。
(書き手:堀越千代、梅咲恵司、井下健悟)
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