「MBA」と「中小企業診断士」、使えるのはどっち 学習内容は近いが、学び方・費用・その後に差

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筆者も投資ファンドでの勤務や起業を通し経営を学んできたのですが、率直に申し上げると、経営の知識をつけるだけであるならMBAも中小企業診断士の資格も必須ではありません。経営者のそばで直に学ぶなり、書籍などで知識を習得しアウトプットしていくことでも十分可能です。では、これらの資格を取得する最大の意味はどこにあるのでしょうか? その答えは、「取得するまで/取得後の人脈形成」にあります。

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MBAも中小企業診断士も、密な関係が構築されている珍しいコミュニティです。MBAなら同期やOB、中小企業診断士なら合格者の研究会などで幅広くつながりを持てます。それぞれコミュニティの性質が異なるため、今後のビジネスで得たい人脈が「どっちの層に多いのか」を知ることが欠かせません。

MBAに所属する人たちの多くは、昇進を狙ったキャリア組や、転職で年収アップを狙う上昇志向組です。年齢層も20~30代がメインとなり、若手がキャリアアップを狙い知識を身につける場として形成されています。共に切磋琢磨し合った仲間とできる絆は強く、今後の人生においてもよき相談相手やビジネスパートナーとして関係を築くことができます。

また、高い費用を支払って学ぶMBAだからこそ、集まる仲間は意識が高く、相乗効果で飛躍を目指せるというメリットもあります。海外留学の場合には、得られる人脈がグローバルになり、世界的な規模のビジネスが展開できる可能性も広がります。

「独立・地元密着」志向なら中小企業診断士

中小企業診断士の受験層は、「定年後に何かしたい」「今まで得た知識をコンサルタントとして社会に還元したい」という考えを持つ熟練層が多く、実際に40~60代の方が受験生の半数を占めています。長年部長を務めていたなどの管理職の方が多いため、合格後のコミュニティでは熟練者からの手ほどきを受けることも可能です。

全国各地に中小企業診断士独自のコミュニティが形成されており、診断士同士が相互に仕事を紹介し合うような流れも出来上がっています。若手であっても熟練者に囲まれながら仕事のスキルを学んだり、仕事を斡旋してもらったりすることが可能です。むしろ30代の若手だからこそ、可愛がってもらえ仕事に恵まれるチャンスもあります。

このように両者の特徴を知ることで、どちらが自分により合っているのか見極めることが可能です。転職や社内昇進にはネームバリューのあるMBAのほうがメリットは大きいですし、独立したいという方や、中小企業の成長や苦難を支援したいという志のある方には、中小企業診断士の人脈のほうが有利でしょう。人は環境に左右される生き物です。なりたい将来の自分を思い浮かべ、そのイメージに近い道を選ぶことが最適だと言えるでしょう。 

鬼頭 政人 資格スクエア創業者、弁護士

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きとう まさと / Masato Kito

1981年生まれ。開成中学、開成高校を特別優等の成績で卒業後、東京大学文科1類(法学部)に現役で合格。同大学法学部卒業後、慶應義塾大学法科大学院に現役で進学し、同大学院在学中に司法試験に一発合格。司法修習を経て都内の法律事務所に弁護士として勤務。ベンチャー企業を多面的に支援したいと考え投資ファンドに転職した後、22013年12月に資格試験対策をオンラインで提供する「資格スクエア」を創業、その後、ワンストップ電子契約サービス「NINJA SIGN」(後にfreeeサインと名称変更)も創業。著書に『東大合格者が実践している 絶対飽きない勉強法』など。

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