企業の宣伝に暗躍「インフルエンサー」の正体 かつては「商品ばらまき」も横行していたが…

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40〜50代のビジネスパースンが学生の頃は、こうしたインフルエンサーの役目は若者向け雑誌が担っていた。男性誌なら『ポパイ』、女性誌なら『JJ』といった、雑誌作りに学生が参加することでさまざまな流行のタネが作り出されていったことを覚えている人もいるだろう。

しかし、学生が参加して作るコンテンツといっても、実際に雑誌を発行しているのは企業である。だからこそ、一定の倫理規定のもとにコンテンツが作られ、企業は出版社に対して広告を打つことができた。

ところがインフルエンサーは個人であるため、大企業は直接アプローチしにくい。PR会社などを通じて個々に連絡を取っている例もあるが、前述したようにインフルエンサーの多くは数万フォロワーとそれほど多くはない。このためインフルエンサーを通じて商品やサービスの告知を行おうとする企業とインフルエンサーの間をつなぐマッチングサービスを得意とする企業が増えつつある。

インフルエンサーをめぐるマーケティング市場は、かつてのブログ市場のように拡大しているが、問題点も散見される。コンプライアンス意識の低い一部企業が、直接インフルエンサーにアプローチして“ステマ”、いわゆるステルスマーケティングを持ちかけたり、あるいはステマを疑われるような告知方法を誘導することで露出先を少しでも多く見せかけようとするインフルエンサーマーケティング会社もある。

「インスタ映え」を意識する店舗が急増

しかし、いくつかの問題を残しながらも、インフルエンサーの活用はPR、マーケティングにおいて欠かせないものとなり、大企業も積極的に活用するようになってきたことは、多くの読者がすでにご存じのことだろう。

多くのインフルエンサーが画像・動画共有サイトのインスタグラムを中心に活動していることから、“インスタ映え”あるいは“インスタジェニック”といった言葉が流行。さらにテレビでも日常的に聞く一般的な言葉となり、インスタジェニックな写真が撮りやすい商品デザイン、盛り付け、内装などを志向する商品や店舗が急増していることからも、その影響力の大きさが想像できるだろう。

写真や動画をきっかけに、直観的にフォローあるいは実際の消費行動につながっている例は多く、もはや本記事で取り上げるまでもないトレンドとなっている。女性向けファッション商品が多いのは女性が求める共感を写真から得られやすいからだろうか。

特に女性向けファッションジャンルに関しては、DeNA傘下だったペロリ(現MERY)運営のインターネットメディア「MERY」が公開を停止して以降、MERYと類似したメディアが多数立ち上がったが、いずれも成功していない。なぜなら、急速にインフルエンサーを活用したマーケティングに企業がシフトしはじめたからだ。

企業がMERYと組もうとしていた理由は、広告・PRのために多くの一般個人であるインフルエンサーを扱うことが難しかったからだ。MERYとインスタグラムは同様に”共感”をつくり出していたが、PRや広告に活用するならば企業運営メディアのほうが扱いやすいのは前述したとおりだ。

ところが、MERYの公開停止以降、同じように共感を呼べる類似メディアが登場しなかった一方、インフルエンサーを集めてデータベース化し、企業との間に入ってマネジメントを行うインフルエンサーマッチングのサービス事業者が、そのサービスメニューを増やし、企業側がアプローチしやすくなってきた。

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