売れないと嘆く人はお客の無意識を知らない 消費者の行動や心理の底にあるホンネ

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「経験に先行して期待を作り出せ」というのも、無意識に訴求するテクニックの1つです。かつてスタンフォード大学で意思決定神経科学研究所の所長を務め、現在ではアリゾナ州立大学教授のサミュエル・マクルーアは、人々にコカ・コーラのラベル付きのコーラと、ラベルのないコーラを飲んでもらい、どちらが好きだったかを聞くとともに、その際の脳の活動を記録しました。

『顧客を説得する7つの秘密』(原題:7 SECRETS OF PERSUASION、すばる舎リンケージ)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

すると、人々は、中身は同じコーラなのに、コカ・コーラのラベルの付いたコーラのほうがおいしかったと答えたのです。

しかし、驚くべきなのは、脳の活動においても、ラベル付きのコーラを飲んでいるときにより快感を覚えていることが表れたということです。物質的にはまったく同じ特性でも、ラベル付きのコーラとラベルなしのコーラでは、それを飲む体験に違いが出るわけです。

つまり、人間の予想・期待により、実際にそれを得たり経験したりする際の結果は変えられるということです。事前イメージをよりポジティブなものに変えるだけで、消費者に選ばれる確率は確実に上がり、満足度も上げることができるのです。

人間の選択の9割は無意識が担っている?

ほかにも簡単ですが、以下のようなテクニックもあります。

「“無意識”の言葉を話せ」
……無意識には独自のコミュニケーション方法、つまり、独特の文法とスタイルを持った言語がある
「望みを変えるな、望みを満たせ」
……相手の欲しいものは、どのようにして手に入れればいいかを示すことで、相手をその気にさせることができる
「尋ねるな、掘り起こせ」
……人は、自分がなぜその行動をするのかわかっていないことが多い。しかし、その「なぜ」を見つけ出すことはできる
「感情に訴えろ」
……事実を提示しても、相手の感情的な選択を変えることはできない
「ひと工夫しろ」
……ちょっとしたアートを取り入れることで、相手の無意識を惹(ひ)きつけることができる

環境も人々の嗜好も目まぐるしく変化し、製品のライフサイクルも短くなっていても、人々の無意識の中心にある、「快感を追い求め苦痛を忌避する」という性質は変わりません。だからこそ、このような時代で効力を発揮するのです。

人間の選択の9割は無意識が担っているといわれるほどです。マーケターや広告・広報に携わる方を強力にサポートするテクニックであることは疑いないでしょう。

ジェームズ・C・クリミンス DDBシカゴ チーフ・ストラテジック・オフィサー

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James C. Crimins

世界第2位の広告代理店グループであるDDBにおいて27年間にわたり、主にDDBシカゴのチーフ・ストラテジック・オフィサーを務める。また、世界的なブランドとして知られる、バドワイザー、マクドナルド、ステートファーム、ベティ・クロッカーなどのブランド企画ディレクターとしても活躍。社会学の博士号と統計学の修士号を持ち、米国ノースウェスタン大学メディルスクールで、統合マーケティングコミュニケーションを教えた。誰もが説得力と影響力を手にする方法を、科学的、専門的、学問的な観点を背景に伝えている。

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