国政を変えるために地方の選挙制度を変える
この困難を助長するのは、国政と地方政治の選挙制度の不均一である。国政では小選挙区制を中心に部分的に比例代表制が採り入れられる混合制度であるのに対して、地方政治では、一人が選ばれる首長選挙と、市区町村の大選挙区制、都道府県・政令指定都市の中選挙区制と小選挙区制が混在している。
国政では、1990年代の選挙制度改革以降、政党交付金制度の導入も相まって政党執行部が強化され、有権者も政党を重視して投票を行う度合いが高まった。しかし地方では、依然として政治家個人への投票が重視されがちな制度なのである。
地方議員を中心とする地方の政治家は、個人として有権者に顔を売ることには積極的でも、政党としてのブランドを確立しようとはしない。そもそも地方で「組織」を作るためのコストなどかけたくないのだ。
地方組織を作りにくくする選挙制度の不均一の下で、なぜ自民党は地方組織の形成に成功しているのだろうか。それは、当選後、自治体レベルの政策に関与するためには、地方議会の多数派を形成すること、議員がまとまることにメリットがあるからだ。さらに、長期政権下では党を通じて国の政策に影響を及ぼすこともあった。まとまった地方組織であるほど、国政への発言力が強化される側面があったと考えられる。
それに対して、議員数が非常に少なく、多数派の形成に影響力のない政党が、地方議会で組織化されるメリットは少ない。反対に言えば、新しい政党が一定の議席を占める自治体では、それなりにまとまりも生まれている。しかし多くの自治体では、議員が少ないから地方組織としてまとまらず、まとまらないから選挙にも弱いという悪循環がある。
地方の選挙制度は国政に直接関係ないように思われる。しかし、両者の連動を考慮すれば、国政で健全な政党を生み出すためには地方の選挙制度改革こそが重要になるのだ。
【初出:2013.8.31「週刊東洋経済(ワーキングマザー)」】
(担当者通信欄)
国政選挙と比較してみると、地方の選挙では有権者の関心、投票率が如実に低い場合がしばしば。自分自身を振り返ってもニュースや候補者の情報への接し方が違っていたかもしれません。国政と地方政治やそれぞれの選挙制度の違いを注意深く比較してみる機会は、そう多くありませんが、知らず知らずのうちに政治、選挙結果に影響を与えうる相違をしっかりと踏まえておくことや両方を考慮に入れる、ということを意識して行わなければ、選挙制度の見直しにせよ、有権者の投票にせよ、意味が薄まってしまうのかもしれません。
さて、砂原庸介先生の「政治は嫌いと言う前に」最新回は2013年9月23日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、物流最終戦争)」に掲載です!
【たとえ祈っても願っても、理想の政治はやってこない】
一年にわたる連載も今回が最終回です!
日本において政党とはどのような存在なのか、法の下でどのように規定され、有権者にどのようなイメージを持たれているのか? 単なる個人の集合ではない「組織」としての政党を、いかに機能させていくのか? これらを検討していくことの必要性に迫ります。
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砂原先生も寄稿の『政党組織の政治学』(建林正彦・編)を弊社より刊行いたしました。ぜひ本連載と併せてお読みください。
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