アマゾンのAIスピーカーが最強といえるワケ 約4000万曲聴き放題の定額サービスも発表

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約4000万曲が聴き放題の「Amazon Music Unlimited」も発表された(筆者撮影)

約4000万曲をライブラリとして用意した聴き放題のAmazon Music Unlimited(月額980円、プライム会員は月額780円)をAmazon Echoと同時に発表したことからもわかるとおり、音楽配信サービスはAIスピーカーを普及させるために極めて重要なサービスだ。グーグルならGoogle Play Music、LINEならLINE MUSICだが、それぞれ無料期間があるとはいうものの、何らかのサービスを契約せねばならない。

これに対してプライムミュージックは約100万曲とはいえ、プライム会員なら新たな契約なしにいつでも楽しめる。ライブラリ数は大きく異なるものの、アマゾン側で用意したプレイリストをBGMとして流すなどの使い方ならば十分に使える。そのうえで、Amazon Music UnlimitedはEchoユーザーに月額380円で提供される(Echoユーザーでも、Echo以外のデバイスで利用する場合には通常の契約が必要)。

こうした“おはじめ”の際の手軽さは、AIスピーカーというカジュアルなオーディオ製品にとって大きなアドバンテージだ。製品価格、各種サービスの価格と積み上げたとき、とりわけプライム会員にとって割安に見えるよう価格が設定されていることも、アマゾン得意客にとっては魅力的に見えるだろう。

アマゾンのほうが「消費者」により近い

「Echo」(1万1980円)のほか、小型版の「Echo Dot」(5980円)、上位モデルの「Echo Plus」(1万7980円)が発表された(筆者撮影)

またグーグルとアマゾンの2社を離れた位置から俯瞰してみたときに、アマゾンのほうがAIスピーカーと周辺アプリケーション、サービスを提供する際の目的、目線が消費者により近いという特徴がある。アマゾンは消費者とじかに接しながら、商品、コンテンツを長年販売してきた企業だけに、消費者体験、消費者価値を高める意識の強さを感じる。それはAndroidを開発するグーグルと、iOS(+iPhone)を開発するアップルの違いにも似ている。

さらに先を見据えるならば、日常的な行動に対してAIアシスタントを通じてユーザーを助ける。そんな機能の実装、消費行動に近いアマゾンのほうが、消費者向けのAIアシスタントサービスで情報を集めやすいのではないか。

AIプラットフォームと消費者の接点という視点では、Androidを持つグーグルのほうが有利との見方もあるだろうが、アマゾンは実際に商品・サービス・コンテンツを販売する世界最大のストアを持っている。実際には商品を購入する際の行動パターンだけでなく、“ある商品を購入せず、別の商品を買った”など、購入に至らなかった行動履歴まで持っている。

Amazonプライムと消費者との距離の近さ。これこそがアマゾン、そしてアマゾンが仕掛けるサービスの強さといえる。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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