指紋認証、iPhone5S登場で主流に? 米マイクロソフトなども追随へ

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9月12日、仕事やショッピング決済といったさまざまな場面において、指紋などで個人を識別する生体認証(バイオメトリクス)機能付き携帯端末が日常となる未来もそう遠くはないかもしれない。写真は11日、北京で撮影(2013年 ロイター/Jason Lee)

[シンガポール/サンフランシスコ 12日 ロイター] - 新型「iPhone(アイフォーン)」 に指紋認証機能を搭載した米アップル。仕事やショッピング決済といったさまざまな場面において、指紋などで個人を識別する生体認証(バイオメトリクス)機能付き携帯端末が日常となる未来もそう遠くはないかもしれない。

最新の「iPhone 5S」に搭載されている指紋認証機能「Touch ID」は、待ち受け画面の解除とアップルのオンラインストア使用時に限られているが、アナリストからは同社がこうした技術を取り入れたことで、世間に広く採用される可能性があると指摘する声が聞かれる。

アップルのデザイン担当上級副社長ジョナサン・アイブ氏は、10日の発表イベントでのビデオプレゼンテーションの中で、「Touch IDはiPhoneの今後の使い方を定義づけるものだ」と述べた。

デバイスや銀行口座、オンラインサービスにアクセスするには、暗証番号(PIN)がこれまで主流だったが、推測可能だったり、ハッキングされたりすることがある。

また、多くのユーザーが面倒だと感じる操作を必要とすることから、アップルによると、スマホユーザーの半数がパスワードを設定したがらないという。

従って、指紋や眼球の虹彩、声などで個人を識別するバイオメトリクスは魅力的な機能だと言える。

モバイル電子商取引を快適に

アップルのこうした動きは、本体のロック解除や音楽・動画再生アプリの「iTunes(アイチューンズ)」やアプリ配信サイト「App Store(アップストア)」などの同社が提供するサービスといった範囲を超えてすぐには広がらないかもしれないが、意義ある第一歩には違いない。

アップルによると、iTunesのアカウントは5億以上。セキュリティーの向上と決済の簡素化は、オンライン上での購買力を押し上げることになる。

また、モバイル電子商取引セクターに安心感を与えることにもつながる。市場調査会社ユーロモニターの推計では、来年は米国だけで、モバイル電子商取引市場の規模が400億ドルに達するという。

モバイル端末向けアプリを制作するSocialRadarのMichael Chasen最高経営責任者(CEO)は、指紋認証が、これまでパスワードが盗まれたりすることを恐れ、モバイル端末を通して買い物をしなかったユーザーの気持ちを変える可能性があると指摘。モバイル電子商取引にとって、生体認証が「欠けていた部分」かもしれないと述べた。

アナリストや業界関係者によると、バイオメトリクスによるセキュリティーは、社員が持つ個人の端末を会社のネットワークにつなげることを不安に感じる企業にも魅力的だという。

自社製品にバイオメトリクスを採用したのは、アップルが初めてではない。携帯端末で言えば、モトローラ・モビリティ・ホールディングスや富士通<6702.T>などが指紋認証付きの製品を発売してきた。だが、これまで成功したとは言い難かった。

その理由の1つはコストで、この他にもサポートを確立するためのエコシステムがほとんど存在しなかったということが挙げられる。IHSのアナリスト、ビル・モレリ氏は「バイオメトリクスはこれまで、『なくてはならない』というよりも、『なくても構わない』高価な機能だった」と指摘する。

加えて、指紋認証はユーザーに煩雑な作業を強いることもあった。調査会社ガートナーのSong Chuang氏は、ユーザーの指紋を認識させるのに、最大で6回も画面にタッチしなければならないケースもあったとし、「素晴らしいユーザー体験とは言えない」と語った。

再活性化するバイオメトリクス市場

アップルが新型の「5S」に指紋認証を採用するとの計画は発表イベントのずっと以前から取り沙汰されており、業界内では期待が高まっていた。同社は少なくとも2009年以降にバイオメトリクスの特許申請を行っている。

オーストラリアのセキュリティー企業Microlatch社の創設者、クリス・バーク氏は、アップルが2━3年前、同社の指紋センサー使用をめぐり接触してきたとし、「彼らのロードマップには指紋認証があったことは明らかだった」と話した。アップルはまた、昨年に指紋センサー技術開発の米オーセンテックを約3億5600万ドルで買収している。

こうしたアップルの動きは、バイオメトリクス市場の再活性化につながっている。

例えば、スウェーデンのバイオメトリクスメーカー、Fingerprint Cards ABの株価はここ1年で1400%上昇。同社の見通しによれば、業界全体として、指紋認証付き家電機器の今年の出荷台数は1億台に、2015年には10億台以上に上るという。

負の側面も

一方、指紋認証テクノロジーには負の側面もある。その長所は宣伝されているほどではなく、暗証番号やパスワードのように変更もできない。

「指紋認証は完璧ではない」。こう語るのはバイオメトリクスの専門家で、アップルの携帯端末向けにアプリを開発しているInvasivecodeのCEO、Geppy Parziale氏だ。同氏は、プライバシーと法的な問題が、指紋認証の精度をテストするための十分な数の指紋入手を困難にしていると指摘する。

だが、もしこの技術を主流へと押し上げることができるとしたら、それはアップルだと専門家らはみている。

韓国のサムスン電子<005930.KS>とLG電子<066570.KS>は、自社製品に同テクノロジーを組み込むのに苦労している。

これはアップルにとって幸先のいい滑り出しだが、同社の優位性はそう長くは続かないかもしれない。米マイクロソフトは同社の基本ソフト(OS)ウィンドウズの最新アップデートに指紋認証システムを採用しようとしている。また、指紋センサーを製造する米バリディティー・センサーズのSebastien Taveau氏は「(米グーグルのOS)アンドロイド搭載機のメーカーが動き出すのは時間の問題だとみるのは当然だろう」と話した。

(原文執筆:Jeremy Wagstaff記者、Malathi Nayak記者、翻訳:伊藤典子、編集:梅川崇)

*本文中の表現を一部修正して再送します。

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