株価が下落する「危険なサイン」が出てきた これから日本株を買っても儲かるのか?

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加えて、財政面では、9月中に期限が来るはずだった、暫定予算策定と債務上限引き上げについても超党派で合意され、12月8日(金)まで延長となった。

このように、9月辺りで米国の財政問題や経済政策に対する失望が、米国株価と米ドルを押し下げ、それに国内株価も巻き込まれて下落する、と見込んでいたものが、いわばひらりと懸念要因がかわされたわけだ。したがって、元々日本においては大きな株価下落要因がなかったため、「米国発の市場波乱」という重石が現れなかった日本の株価は、大きく上振れする展開となったと考えている。

年末にかけては警戒を解くべきではない

だが、それでも、年末までの時間軸を考えると、「米国発の市場波乱」が起こらないとは考えにくい。このため、米国株も、米ドルの対円相場も、日本の株価も、今より年末の方が、居所が低いと懸念している。

理由は「頑固」といわれそうだが、米国の減税策に対する失望や、財政審議についての懸念を想定している。共和党内で、最も財政赤字の膨張に反対するグループである、フリーダム・コーカス(自由議員連盟)は、確かに、今のところは減税案に賛意を表明している。

しかし、たとえば連邦法人税の20%への引き下げは、もともと共和党が、オバマケアの改廃による医療支出削減や、国境税の導入による増税を代替財源として、想定していた税率だ。オバマケア改廃も国境税導入も、現時点では見通しが立たない(ドナルド・トランプ大統領は、あきらめずに何度もオバマケア改廃を目論んではいるようだが)。代替財源がほとんどない、という事態になれば、フリーダム・コーカスは、他の歳出の大幅削減などを強く要求するか、それが無理だと考えれば、減税案に対する賛意を翻す展開もありえよう。

ただ、そのように、減税案がとん挫する(その結果として、当初案より減税幅が縮小される)タイミングがいつかは、極めて見通しにくい。一番早ければ、今週とも言われている、上院における予算決議の可決は、スムーズに進まない場合だろう。あるいは、フリーダム・コーカスなど財政赤字拡大懐疑派に配慮して、上院では予算規模を縮小した独自の予算決議を作成して可決するが、下院での決議内容とは異なるので、両者をすり合わせることが難航するかもしれない。

一方、財政審議については、すでに述べたように、12月8日(金)が、次の暫定予算と債務上限引き上げの期限だ。最終的に債務上限が引き上がらず、米国債がデフォルトするような事態になるとは考えないが、期限前に議会で審議が揉めて、市場が懸念するような展開はありえよう。

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