電通過労死事件「罰金50万円」は軽すぎないか 現行の労働法規では抑止力になりえない
社員に違法な残業をさせたとして労働基準法違反の罪に問われた裁判で、東京簡易裁判所は10月6日、電通に対し、「罰金50万円」の判決を言い渡した。
「罰金50万円」がペナルティになりうるのか?
この判決に対して複数の知人に意見を聞いてみたところ、「電通規模の会社にとって50万円の罰金は軽すぎる」という感想で一致した。電通といえば、売上高8000億円超、本業の儲けを示す営業利益が1300億円を超える大企業である。私自身も、一市民としての感覚では同感である。
労働基準法における罰則は、企業規模別に定められているわけではないので、現行法に照らし合わせた法的な意味では「罰金50万円」という判決は妥当になってしまう。とはいえ、実質的に考えると、刑事罰の本来の目的である「抑止力」という観点からしても、「罰金50万円」という処分は電通規模の会社に対して実効性があるとは言えない。
この点、たとえば独占禁止法を見ると、罰金のほかに課徴金というペナルティ制度が設けられている。カルテルなどの違反行為を行った期間の売上高に対し、一定のパーセンテージを乗じて計算されるという、売上高比例で計算されて企業に科されるものである。だからこそ、企業規模に応じた実効性のあるペナルティとして機能している。
国を挙げた「働き方改革」が叫ばれる中で、労働基準法においても、どのような基準や計算式になるかは議論を重ねなければならないが、売上高や従業員数など企業規模に応じた実効性のある罰金制度は必要かもしれない。企業規模に応じたペナルティを科せば、過重労働やパワハラなどに対する実質的な抑止力として機能するのではないだろうか。
ただ、それが実現したとしても、過重労働やパワハラを防止するうえで、現状の労働基準法では根本的な抑止力になりきれない。それは、過重労働などを命じた「個人」に対する処罰が軽いからである。
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