川重・三井造船、両社長が語る破談の真相(下)

三井造船 田中孝雄 社長

――1ドル=90円台後半の為替条件なら、受注して黒字になるのですか。

非常に微妙なところ。肝心の(ドル建ての)船価が戻っていませんから。需給ギャップが崩れて大きく下がった後、そこからなかなか上がってこない。為替の問題は何とか落ち着いてきたので、後は船価が多少でも戻ってくれれば、と期待しているのだが……。

――2カ所ある造船所(岡山玉野、千葉)や人員などのリストラ計画は?

造船所の統廃合は考えていないし、その必要性もない。今現在で見ても、およそ2年分の手持ち工事はある。操業度は少し下がるが、現場の正社員については現状維持でいけると思う。協力会社の方々については、ある程度我慢していただくことになる。

コストを下げる一方で、船種は増やしたい。近年はバラ積み船に集中してきたが、千葉事業所で再びLNG運搬船に挑戦する。米国からのLNG輸入開始に向けて、国内の電力・ガス会社から、まとまった数のオーダーが出てくる。数年間遠ざかっていたとはいえ、当社は国内企業としては三菱重工業、川重に次ぐ16隻の建造実績があり、ノウハウを持っている。今回の大量発注は大きなチャンス。うち1社で造れる隻数は限られるから、川重など他社との共同受注という形で大口発注に対応したいと考えている。

海洋資源分野やプラントなど非造船の強化急ぐ

――6月末に正式就任してすぐ発表した中期経営計画では、非造船の強化による事業構造の改革を掲げました。

今は商船建造や舶用エンジンといった伝統的な造船分野に大きく依存し、経営が海運・造船市況にかなり左右されやすい。「海洋資源分野」「化学・発電プラント」「クレーンなどの作業機械」を伸ばし、4つのバランスがとれたポートフォリオにしたい。この課題にスピード感を持って取り組んでいく。

――非造船を伸ばす具体的な戦略は?

田中孝雄 たなか・たかお* 福島県出身。1973年、東北大学工学部・機械工学科卒、三井造船入社。入社以来25年以上にわたって、舶用ディーゼルエンジンの開発に従事し、エンジンの開発・製造拠点がある玉野事業所(岡山県)で会社生活を過ごした。09年、常務取締役機械・システム事業本部長。11年、経営企画部門担当。13年6月から現職。

まずFPSOから言うと、ブラジルや西アフリカの深海油田開発を背景として、引き続き需要拡大が期待される。設計・エンジニアリングのマンパワーを増やせば、もっと事業規模を大きくできる。三井造船本体の化学プラント部隊が仕事の一部を引き受けたり、応援部隊を派遣するなどして、三井海洋開発の成長をサポートする。

化学プラントは、シンガポールと米国が大きな地盤。特に米国ではシェールガスを原料としたプラント新設が相次いでおり、ビジネスチャンスが広がっている。実際、今年に入って、クラレがテキサス州で新設するボバール樹脂生産設備をEPC(設計、資材調達、建設までの一括請負)で受注したほか、米サソール社が計画する大規模化学プラントの基本設計業務も受注した。クレーンは東南アジアでコンテナヤード用の需要がすごく増えている。受注の動向を見ながら、造船からクレーンの製造現場に人を回すことも考える。

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