袖にされた三井造船、一人で描く生き残り策 川重との統合は破談。造船不況を乗り切れるか。
「再編で会社の規模が大きくなれば、将来のために必要な研究開発や設備投資にもっと多くの資金を投じることができる。10年、20年先を見据えたうえでの話だった」──。三井造船が6月28日に開いた新中期経営計画の説明会。前日に正式就任したばかりの田中孝雄社長は淡々と振り返った。
大手重機・造船メーカーの歴史的な再編として話題を呼んだ川崎重工業と三井造船の経営統合構想は、川重側の推進派だった長谷川聰社長(当時)らの解任という事態に発展。同社新経営陣から一方的に統合交渉中止を通告された三井造船にも世間の注目が集まり、説明会には130人以上もの報道陣や証券関係者らが詰めかけた。
三井造船は、造船事業と国内の造船会社に供給する舶用エンジン事業の二つが本体の大黒柱。こうした伝統的な造船関連分野が前期グループ売上高の半分近く、営業利益では7割前後を占め、各種インフラや航空分野などに多角化が進んだほかの大手重工系メーカーに比べて造船依存度が突出して高い。これが、大きな課題になっている。
造船業界は韓国に続いて、中国勢も急速に台頭。一方、2000年代半ばから続いた海運・造船バブルがはじけて足元の発注量は細り、限られた新船需要を日・韓・中の造船所が奪い合う大淘汰時代に突入した。円高の是正というプラス材料を考慮しても、業界の先行きは厳しい。
三井造船の経営陣が生き残りに危機感を強め、再編へと動いたのも必然だった。川重を再編相手に選んだのにも理由があったと同社幹部は言う。「いろいろな分野にわたって絵が描けた。お互いの事業基盤や技術力を持ち寄れば、造船、海洋資源分野だけでなく、プラント、発電設備などエネルギー関連でもシナジーが期待できた」。
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