社長解任で統合破談 川重、再成長への難題 長谷川氏らに対し、ほかの役員たちが反旗。

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造船・重工業界の名門、川崎重工業が揺れている。同社は6月13日に臨時取締役会を開き、長谷川聰社長、高尾光俊副社長、廣畑昌彦常務の3人を解任。三井造船との経営統合交渉を独断で進めたことが理由で、統合交渉も打ち切った。

新社長に就任した村山滋氏らによると、3人以外の取締役は4月に交渉の事実を知らされたという。5月下旬に行われた検討会議では、多数の取締役が反対意見を表明。だが、「(推進派の3人は)会議の議事録原案に実際の発言と異なる内容を記載したうえ、統合交渉を一時凍結すると言いながら、統合に向けたデューデリジェンス(資産査定)は継続しようとしていた」(村山氏)。

こうした態度に不信感を募らせた反対派の役員は6月7日、交渉打ち切りを議題とする臨時取締役会を13日に招集することを決定した。これに対し、推進派は議長に交渉打ち切りを採決しないよう依頼するなど、妨害工作に動いたという。「コーポレートガバナンスの見地から見過ごせない。もはや業務執行体制の中核を担わせることはできない」(村山氏)。交渉打ち切りと3人の解任は推進派の3人を除く取締役10人が全員賛同した。

三井造船との統合をめぐっては、川重側のメリットを疑問視する声が社内外で相次いでいた。2000年代半ばから続いた海運・造船バブルがはじけ、造船業界は足元の新船建造需要が激減。一部企業では大幅な人員整理も始まった。

先行きの厳しい造船と舶用エンジンを主力とする三井造船に対し、さまざまな事業を手掛ける川重の全売上高に占める造船の比率は1割にも満たない。「伝統的な造船分野への依存度が高い三井造船との経営統合は、川重にとって大きな重荷になりかねない」(証券アナリスト)と危惧する声は多かった。川重の造船部門の幹部ですら統合に強く反発。実際、3月まで造船部門を率いてきた神林伸光取締役は反対派に回った。

では、なぜ長谷川氏らは反対を押し切ってまで、統合交渉を進めようとしたのか。おそらく、その背景にあったのは、自社の成長力に対する危機感だ。

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