川重・三井造船、両社長が語る破談の真相(下) 三井造船 田中孝雄 社長

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重機・造船業界の大型再編として注目を集めた川崎重工業三井造船の経営統合構想は、川重側で交渉を推し進めていた長谷川聰社長(当時)、高尾光俊副社長(社長補佐・企画・財務など統括)、広畑昌彦・企画担当常務の3名が6月の臨時取締役会で解任される事態へと発展。残った取締役10名は即座に三井造船との交渉打ち切りを決め、衝撃的な形で破談に終わった。
一連の解任・破談騒動から2ヶ月以上を経て、両社の新トップが東洋経済のインタビューに応じ、当時の経緯や今後の経営の舵取りなどについて語った。第2回目は、再編破談により、造船不況下での新たな生き残り策が注目される三井造船の田中孝雄新社長に聞く。
川崎重工業・村山滋社長のインタビューはこちら

――田中さんは加藤泰彦前社長(現会長)の下で、経営企画担当役員として、川崎重工業との統合交渉に当たっていました。今回の破談をどう受け止めていますか。

途中段階で突如として話が終わってしまったので、その点が非常に残念。だた、ビジネスにおいては、こういうこともある。今回はいろいろあって大きくクローズアップされたが、私としては淡々と事実を受け止めている。特に感情的なものはあまりない。

会社の事業構造を変えるための再編だった

――そもそも、川重との経営統合に何を期待されたのですか。

三井造船本体は商船建造を主とする造船と舶用エンジンが大きな柱だが、造船は韓国に続いて中国勢も台頭してきた。以前よりもライバルが増え、構造的に厳しい競争環境になっている。そうした中でも会社を発展させていくには、成長が期待される事業をもっと強化したり、有望な新分野に向けた準備が必要。その大きな手段が川重との再編だった。

――具体的に言うと?

時代のニーズに合わせて、会社の事業構造を変えていくということ。たとえば、経済成長が続く新興国では、発電設備や産業用機械、プラントなどで大きなビジネスチャンスがある。エネルギーという点では、日本国内での海洋資源分野も、国の政策で将来的に大きく盛り上がる可能性が出てきた。しかし、当社だけで考えた場合、人もカネも限られる。川重と一緒になればリソースが増え、やれることも増えてくる。10年先、20年先を考えて、お互いの技術を持ち寄ればどんな事業展開が出来るか、を話し合っていたところだった。

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