インスタ映えだけじゃない現代アートの役割 日本とドイツで芸術イベントはこんなに違う
奥能登、種子島、北アルプス、札幌――。これらの共通点にピンときた方は結構な芸術通だろう。以上4つの土地では今年、現代アートのお祭りが開催されている。
近年、アート関連のイベントが日本で盛んだ。とりわけ地方では地域活性や地域ブランディングの観点から、国内外からアーティストを呼び込み活発に行われている。2016年の「瀬戸内国際芸術祭」(岡山県・香川県)には104万人が来場し、経済波及効果は139億円と試算される(日本銀行高松支店と瀬戸内国際芸術祭実行委員会推計)。写真撮影が可能なインスタレーション(展示)が多く、インスタグラムなどSNSとの親和性の高さも人気の一因だろう。
ドイツでも芸術祭は根強い人気
ドイツの地方都市でも同様に、たくさんのアート関連イベントが開催されている。世界最大の現代アートの祭典「ドクメンタ」(カッセル市)や「ミュンスター彫刻プロジェクト」(ミュンスター市)はその代表格だ。
日本もドイツも花盛りのアートイベントだが、戦後に増えたドイツに比べ、日本はこの20年ぐらいで、ぐっと増えた。そして両者には決定的な違いがある。それは作品やプログラムに政治・社会的メッセージが色濃く反映されているか否かだ。
たとえば、筆者が住むドイツ中南部のエアランゲン市で隔年開催のコミック関係のフェスティバル「インターナショナル・コミックサロン」では、第1次世界大戦勃発から100年の2014年に大戦をモチーフにしたコミック画が市街中心地の広場に展示され話題となった。
また、毎夏開催の文学フェスティバルでは、今年は同市にたどりついた難民の若者による「ドイツについて」のプレゼンテーションや報道の自由についてのパネルディスカッションといったプログラムが用意された。過去には連邦家族大臣を招き、作家たちとワークライフバランスに関するディスカッションが開かれるなど、現代社会の課題に踏み込んだ内容が盛り込まれている。これらは庭園にいすが並べられただけで、誰もがふらりと無料で聞くことができる。
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