《不確実性の経済学入門》当選確率が50%と5%の宝くじ どちらを買うべきか?
不確実な状況では、人は効用をその起こる確率で加重平均した期待効用を最大化するように選択するというのが、ベルヌーイに端を発した期待効用理論の基本的な考え方だ。そして、それを発展させたものにゲーム理論がある。
『神経経済学入門』(ポール・W・グリムシャー 著 宮下英三 訳 生産性出版)によると、米国で計算機を雇用主、サルを労働者に見立てた実験では、サルもゲーム理論から想定されたとおりに期待効用を最大化する行動を示した。下のグラフのように、サルが仕事をさぼる、さぼらないという行動を選択できるとき、最も利得(ジュース)を得られる確率で仕事をさぼったのだ。
ただし、このように標準的な経済学の中核を占める期待効用理論には、現在では行動経済学の立場から多くの批判が寄せられている。ポイントは、人間が確率を認知するとき歪みが生じ、実際の確率どおりに認識できないということだ。
確率は過小や過大に評価される
「期待効用=効用×確率」の確率の部分が、人の認知では歪んでしまうのだ。具体的には、小さい確率では人は確率を過大に認知し、大きい確率では逆に過小に認知する。
そのため、確率の低い事象では、利得(例:宝くじ)に対してはリスク追求を行い、損失(例:大地震)に対してはリスク回避の姿勢が強くなる。反対に、確率の高い事象では利得に対してはリスク回避、損失(例:ガンやたばこによる疾病)に対してはリスク追求の姿勢が強くなる。
さて、以上のようなことから50%と5%の当選確率の宝くじについては何が言えるだろうか。50%の宝くじの期待値は5000円と少ないが、手持ちのおカネがない人にとっては目先の5000円の効用が大きいから、50%という確率の高さを選ぶかもしれない。一方、裕福な人は新たに賞金を得ることによる効用が相対的に低いため、5%で100万円が当たる宝くじのリスクを取りにいくかもしれない。またその際、5%という当選確率は、人には実際より高く感じられるだろう。
(週刊東洋経済)
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