「ザ・サークル」が投げかけるSNS社会の問題点 東洋経済オンライン読者限定試写会を開催!
しかし視聴者の欲求は「もっと見たい!」「もっと面白いものを!」と高まる一方。送り手側もその声に応えようとするべく「もっともっと過激なものを」という形にどんどんとエスカレートしていく……。
この映画の面白いところは、そんなメイを、『ハリー・ポッター』シリーズで注目を集め、今年公開の主演作『美女と野獣』も世界的なメガヒットを記録したエマ・ワトソンが演じているということ。
彼女自身、ツイッターのフォロワー数は2600万人以上を誇り、フェミニズムをはじめとした自分の信条を積極的に発信しているインフルエンサーのひとりでもある。しかも子役時代から世界的に注目を集めてきた彼女は、その行動や発言がその都度、世界を駆け巡るなど、周囲の目にさらされながら生きてきた、という意味ではメイと大いに重なる部分がある。エマ自身、「ご存じのとおり、若い頃から人目にさらされてきた人間として、公私の線引きはいつも重要だと感じてきた。この映画を通して、以前よりもずっと強く思うようになったわね」とコメントを寄せるなど、感じるところも多かったようだ。
ネットとプライバシーとの関係に一石投じる
ネット社会になり、他人のプライバシーへの配慮がどんどん希薄になっている。ひとたび凶悪事件が起きれば、「あいつは凶悪犯なんだから個人情報を明かしても問題ない」という大義のもとに、その犯人の名前、家族構成、国籍といった個人情報が瞬時にさらされてしまうことが多々ある。劇中でも、そんなネット社会のあり方が赤裸々に描かれ、メイも次第に恐ろしさを感じるようになっていく。
しかしこれはネット社会となった現代ゆえの寓話なのだろうか。社会学者の古市憲寿氏は、本作のために寄せたコラムの中で「少し昔の社会に、大したプライバシーなんて存在しなかった。隣家の親子関係から経済状況まで知っているなんてことは珍しくもなんともなかった。ほとんどの情報は近所に筒抜けだったのだ。いわゆるムラ社会である」と指摘している。それゆえに劇中のサークル社が実現させようとしている「体験や悩みなどはみんなでシェアしよう」というSNSの”新たなムラ社会”は、むしろ日本のほうが相性がいいのかもしれない。
一見、個人主義のようにも思えるアメリカでこのような映画が生まれたことに興味深さを感じる。ネットの利便性とプライバシーの関係性について一石を投じるこの作品が、考えるきっかけを与えてくれる。
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