「ザ・サークル」が投げかけるSNS社会の問題点 東洋経済オンライン読者限定試写会を開催!
そんな「シェア」社会をもう一歩推し進めるべく、ベイリーは新サービス「シーチェンジ(See Change)」を立ち上げる。「シーチェンジ」とは、遠く離れた場所にビー玉ほどの大きさの超小型カメラを仕込み、その様子をネット上で見ることができるというシステムのことである。「サーフィンが趣味なので、出掛ける前にその日の波の様子が知りたかった」と開発の動機を語るベイリーだったが、このシステムを使って犯罪やテロを根絶し、世界を改革しようという思惑もあったようだ。
ちなみに余談だが、アメリカの人気アーティスト・ベックが、2002年に『シー・チェンジ(Sea Change)』というアルバムを発売したことがあるが、劇中では、「サークル」社内でそのベックがライブをするシーンが出てくる。そんな細かい配慮も面白い。
日本でも、カメラを通して人々を監視する社会が広がりつつある。警視庁が2002年に新宿・歌舞伎町に監視カメラを設置したのを足掛かりに、渋谷、池袋、六本木といった都内繁華街の各所に監視カメラが設置されるようになった。また、コンビニやマンションなどに防犯カメラが設置されているのは周知の事実となっている。かつてはプライバシーの侵害であると非難する声もあったが、今となっては防犯上それもやむなし、という声も増えてきているようにも思われる。そしてそれは世界的な流れにもなってきている。
ネットの監視によって犯罪や事故を防げるが…
本作の主人公であるサークル社の新入社員メイ(エマ・ワトソン)も、とある海難事故に見舞われるも、たまたま「シーチェンジ」を見ていた会員のおかげで九死に一生を得ることになる。そんな経験を経て、メイは「シーチェンジ」の実験モデルに抜擢される。自分の体に小さなカメラを身に着けた彼女は、24時間、トイレに行くとき以外自分の行動をすべてネットに映し出す。暮らしのすべてをさらけ出した彼女のフォロワーはうなぎ上りに増えていき、あっという間に1000万人のフォロワーを獲得。瞬く間にアイドル的な人気を誇るようになる。
とはいえ、メイも、最初はそれほどSNSにのめり込むようなタイプではなかった。しかし憧れの最先端企業「サークル」に入社した彼女は、同僚から「どうしてタイムラインに投稿しないの?」と疑問を投げられる。そして「週末をどう過ごすかは個人の自由だし、企業として“課外活動”を強いるわけではない。ただ君が体験したこと、感じたことはみんなとシェアしてほしい」と言われる。そして同僚も「それは当たり前のことだよね?」と、まったく疑いも感じていない様子。それは、よくあるSF映画のように、惑星を支配するほどの超巨大コンピュータがわれわれの行動パターンを監視する、というものではないが、それでもゾッとするほどにわれわれの身近な物語としてリアルに迫ってくる。
ネット社会となり、個人情報漏洩のニュースはしばしばニュースを騒がせている。誰もがプライバシーを守りたいと考える世の中で、「自分の情報はすべて透明化します」というメイのような、逆にさらけ出してしまう女性が現れたら、絶大なる人気を誇るようになるのもよくわかる。
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