ウーバー、ロンドンで「営業取り消し」の意味 ハイテク企業vs.政府の仁義なき戦い

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ロンドン交通局はウーバーの営業免許を9月末で取り消すとしている(写真:Toby Melville/ロイター)

もし過去10年間で、ほぼいかなる産業にも一貫して流れている共通のテーマがあるとするならば、それはほんの一握りのテクノロジー企業が、ビジネスのやり方に大変革をもたらしてきた、ということだ。情報へのアクセスにはグーグル、意見とニュースの共有にはツイッター、友人とのやり取りにはフェイスブック、買い物にはアマゾン、宿泊先を探すにはエアビーアンドビー、あちこち動きまわるにはウーバーが登場している。

比較的最近まで、ほとんどの消費者と各国政府は、これを好ましい傾向としてとらえていた。こうした企業は納税や地元規制当局の要求に応じることに消極的だという個別の限定的な問題をめぐる論争は存在したが、経済成長や雇用機会をもたらすよい存在であると考えられてきた。巧妙なロビー活動とPR活動によって、シリコンバレーのハイテク起業家たちは、政治家たちと市民社会から歓心を得ていた。

ハイテク企業に対する認識も変わりつつある

だが、これも変わってきている。ウーバーの営業免許を更新しないというロンドン交通局の決定は、各国政府とハイテク企業との争いが急速に高まりつつある中で生じた事例のひとつだ。各国政府は、ハイテク企業があまりにも力を付けすぎ、規則や民主的権力を小馬鹿にしている、と考え始めている。

ウーバーとその最大のライバル企業、リフトは自社ドライバーの指紋採取を拒絶したことで、米テキサス州の州都オースティンからも締め出された。2013年には、サンフランシスコとオークランドで、グーグルやアップルのような大手ハイテク企業の従業員用バスが、公共バスの停留所を不法使用していたところ、抗議者たちからバッシングを受けた。

そのほかの都市も、こうした状況に目を光らせている。ニューヨーク市の規制機関は9月25日、ウーバーを精査することを考えており、ニューヨークのイエローキャブ部門への影響を検証する予定であると発表した。

こうしたハイテク企業に対する政治的な認識も、また変化している。「アラブの春」以降、多くの西欧諸国政府と、とりわけバラク・オバマ政権はハイテク企業が地球規模の民主化を促すと、もろ手を挙げて賞賛していた。

だが、その後、同じような企業が今度は欧州での極右政党の勃興や、トランプ氏が躍進した大統領選をあおったとして、この思い込みにほころびが生じたのである。米議会の圧力により、フェイスブックは自主的に3000件の大統領関連広告の詳細情報を引き渡した。これらの広告は、ロシア関係者から資金提供されていたようだった。

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