ウーバー、ロンドンで「営業取り消し」の意味 ハイテク企業vs.政府の仁義なき戦い
こうした調査は、まだ発端にすぎないのかもしれない。フェイスブックやツイッターのような企業は、欧米政治の激しい変化の原因となったことで責められている。自動ボットによって政治を過激化させたり、時には過激思想を拡散させたい強硬派に乗っ取られることを容認してきたとして、両社は非難されているのである。
今やハイテク企業に近付きすぎることは、自らを危険にさらすことになる。グーグルから資金提供を受け入れていた米国のシンクタンクは、今やそれを理由に批判され、グーグルや同業他社に関する批判的な論争を抑制しているとして、非難される立場に陥っている。
バランスを取るのが困難になっている
さらにここへきて、こうした企業は雇用機会を広げるより、むしろ既存の仕事を奪っているという批判も台頭している。たとえば、世界中の至るところで、ますます多くの店舗がシャッターを閉じてしまっている状況を、あるトレードアナリストは「小売業の黙示録」と呼んでいるが、アマゾンの成功はその主要な原因となったと考えられている。
一方、ウーバーは制約の厳しいタクシー業界にとって「有害」であることが判明している。ロンドンの有名なブラックキャブのドライバーたちは、とりわけ激しい打撃を受けており、彼らの政治家への積極的なロビー活動によって、ロンドンのサディク・カーン市長が、ウーバーの営業許可の一時中断を決めたとされている。
もっとも、この決定にはすぐに反論が生じた。たとえば、ウーバーが同社のドライバーや、タクシー業者の権利を無視していたり、ドライバーによる嫌がらせや性的暴行が報告されてきたという批判に対して、同社は価格見直しなどサービスを改善することで対応してきた。同社はまた、世界中で数十万人に雇用機会を提供してきている。ロンドン市の決定に反対する署名にはすでに60万人以上がサインしている。
こうした動きは新しいものではない。フェイスブックやグーグル、ツイッターはロシアや中国といった比較的独裁体制の国々でサービスを初めて以来、ずっと国家政府ともめてきているからだ。こうした国々では、国民が素早く容易に情報にアクセスできることに脅威を感じており、時には意味もなくサービスが遮断されることもあった。
ハイテク企業がバランスを取ることは、間違いなく困難になっている。グーグルやアップルなどの企業は、各国政府や当局が必要以上にデータ提供を求めてきた場合でも、ユーザーのプライバシー保護を理由にデータ提供を拒むことを美徳としてきた。データの種類によっては、その理論が通じる場面もあるが、納税などが絡む場合はその限りではないと多くの政府は考えている。