40歳キャリア独身女性が陥った終身保険の罠 「年利回り1.75%」の甘い言葉には裏があった

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岩城:さらに、「もし途中で支払いが大変になったら解約すればよい」と勧誘時に言われたそうですが、実際、解約しようとしたら、解約返戻金は240万3000円。そのときまでに払っていた払込保険料456万円の52%だったわけですね。48%の損失は大きいですね。

新海さん:独立して、もっと貯蓄を増やす必要もあったので、解約しようと思ったのですが、さすがにほぼ半分になるのは、いくらなんでも損だろうと思いました。

岩城:それで、「解約するよりは」と、払い済み保険にされたのですね。

「47年後の87歳にようやく100%戻る」でいいのか?

新海さん:払い済み保険金額は408万円でした。456万円はすでに支払ったわけですが、いずれ408万円戻ってくるわけだから、解約よりはいいと。しかし、返戻率が100%になるのは87歳の時だそうです。87歳まで生きているかどうかわからないし、今後の金利上昇についていけないかもしれないし、4800万円の当初の保険は解約してよかったです。でも、この新しい払い済み保険をいつまで持てばいいのでしょうか。

岩城:つまり、87歳まではずっと元本割れをしている状態だということですね。気が遠くなりますね。

さて、払い済み保険をいつまで持つかです。これは保険金額408万円の終身保障を持っているのだと考えたほうがいいですね。そう考えると、返戻率100%(=元本割れなし)にこだわることは、経済合理的ではないのかもしれません。

もし、おカネを増やすことが主な目的ならば、コストの高い保険は不利です。この連載でもお伝えしているように、老後資金を作るのなら、まずは、税制優遇の大きい確定拠出年金制度やNISA(少額投資非課税制度)をおカネの置き場所にして運用するほうがよいでしょう。

拙著(山崎元氏との共著)『人生にお金はいくら必要か』でもご紹介しているシンプルな運用方法ですが、たとえば、低リスクで運用したい場合、インデックスファンドを10%(=期待リターンは、現在おおむね5%)と個人向け国債(最低金利0.05%)を90%持つとします。

その場合、期待リターンは0.545%で、リスクが2%(リターンの年率標準偏差で)くらいという計算になります。もちろん元本確保ではありませんが、安定的な運用で、しかも、途中には大きな値下がりリスクがない運用になります。もし、途中売却しても、金利変動に対しては、ほぼ無事のはずです。

実は、長期間、固定利回りで運用しようとすると(たとえば、通常の長期国債を買う)、将来の金利上昇時の場合のリスクが大きくなります。ですから、インデックスファンドの比率は、もう少し大きくても(たとえば20%くらい)いいかもしれません。

(冒頭でも述べたように)「老後のおカネを作りたい」と考えれば、「個人年金保険」や「終身死亡保険」を思い浮かべる人が多いのです。

生命保険文化センターの「平成28年度生活保障に関する調査」によりますと、老後生活のための経済的準備を何らかの手段で「準備している」は 64.8%、「準備していない」は 33.0%です。そして、準備しているという人の具体的な準備手段は、「預貯金」が45.2%、「個人年金保険・変額個人年金保険や生命保険」(44.0%)となっています。しかし、老後資金に対する充足感は低く、「充足感あり」は 21.9%、「充足感なし」は実に71.0%にも上っているのです(同調査)。

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