「稟議書」が中々通らない人の致命的な6欠点 年100本稟議書を通した男が「通る秘訣」伝授

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5.「すぐに稟議が通る」と甘く見積もってしまう

「部下が『この稟議書を3日以内に通さないと間に合わない』と泣きついてきた。そう言われても自分だけで決められないので、サポートにも限界が。というか、もっと早く出せるだろう、と叱りました」(インテリア・43歳)

稟議は予想以上にかかるもの。忙しい決裁権限者が出張などで不在にし、1週間以上放置してしまうことも珍しくない。また、稟議に通らなければ、もう一度作成し直すこともある。にもかかわらず、「すぐに稟議が通る」と甘く見積もってしまう若手は少なくない。その結果、その案件に関するスケジュールが大幅に狂ってしまう可能性もある。

そうならないためには、稟議が通るまでの期間は長く見積もった上で、スケジュールを組むこと。また、できるだけ早めに稟議書を作成し、早めに稟議申請をすることも大切だ。

また、上司や役員の長期出張などの不在の予定を、秘書や同僚などに聞いて把握しておいたほうがいい。そうした状況をつかんでおけば、「いつまでに提出」というスケジュールも逆算することができる。

稟議書を出す前の「根回し」

6. 根回ししないで、稟議書を申請する

ここまで稟議書の書き方について言及してきたが、稟議書を通す上で最も大切なポイントは別にある。それは、「稟議を回す上司などに根回しすること」だ。

海老原氏は、稟議書を提出する前に、必ず上司たちに「こんなことをやろうと思うんですが、良いですかねえ?」と軽く伝えていたそうだ。

「上司たちが嫌うのは、自分が聞いていない案件が、いきなり稟議書で回ってくること。そういった案件は『何かリスクがあるに違いない』といつも以上に警戒するのです。だから通りにくくなる」(海老原氏)

稟議書をあげてから「リスクが大きいので却下」といわれると、それを覆す理由を作るだけで大変な作業になる。しかし、事前に伝えておけば、その警戒感はなくなる。また、事前にダメ出しをされていれば、その部分を修正すれば、通りやすくなるし、そもそも「稟議書の内容説明のための呼び出し」という手間や、却下の可能性も少なくなる。

事前に伝える時のポイントは、稟議にかかわるすべての人に伝えること。「俺は聞いていない」となると、その人がダメ出しをしてくることもある。また、話は数分程度で済ますこと。忙しいなか、時間をとらせると、嫌がられるからだ。

また、その際に、「再来週には発注したいので、来週の前半までに決裁いただけると助かります」と、スケジュール感を伝えておくのも重要だ。

「いかにも日本的なムダな風習だ」と根回しを嫌がる人もいるかもしれないが、そんな小さなコミュニケーションをするかどうかが、後に大きな差となってあらわれる。そう考えたら、やらない手はないだろう。

以上の基本中の基本を守っていれば、稟議書が通らずに困ることはぐっと少なくなるだろう。稟議書を作成する必要がでてきたときには、ぜひ意識してほしい。

杉山 直隆 オフィス解体新書・代表

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すぎやま なおたか / Naotaka Sugiyama

1975年生まれ。専修大学法学部卒業後、カデナクリエイト入社。ビジネス誌やビジネス書、企業の社内報・PR誌の執筆・編集を主に手がける。2016年に独立(屋号:オフィス解体新書)。社会人インターンシップ情報を紹介するブログメディア「30歳からのインターンシップ」を立ち上げ、取材活動をしている。共著に『課長・部長のための労務管理 問題解決の基本』『図解&事例で学ぶ入社1年目の教科書』『クイズ商売脳の鍛え方』など。

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