プレミアムフライデーなどの政策が成功して一時的に家計の消費意欲が高まったとしても持続性はないだろう。
たとえば、家計消費が10兆円増加し乗数効果を含めてGDPが13兆円増加したと仮定しよう。2015年度では、GDPの約6割が賃金や個人企業所得、財産所得を含めた家計所得になっているので、家計所得は7.8兆円増えると予想される。所得の増加で所得税や社会保険料の負担が増加するが、これを差し引くと可処分所得の増加は4.6兆円にしかならない。2015年度の実績をベースにすると、家計貯蓄率は0.7%からマイナス1.1%に低下してしまうことになる。
貯蓄を減らし消費を増やすことに持続性はない
2013年度には、増税前の駆け込み需要のために家計貯蓄率はマイナス1.1%になったが、こうした状態が長期間持続することは期待できないだろう。さまざまな政策が一時的に成功したとしても、GDPのどれだけの割合が家計に可処分所得として分配されるかなどの経済構造が大きく変わらないと、持続性がない。現在の経済構造のままでは、財政赤字や対外収支黒字の拡大なしに日本経済が安定的に成長するということはできないだろう。
現在の金融緩和政策が成功して物価上昇率が高まっても、日本経済の構造変化が自動的に実現するとは考えにくい。日本の潜在的な生産能力をさらに高めても、需要が増えなければ生産能力を発揮することはできない。短期的な景気刺激策の成果を長期的なものにするためにはどのような経済構造を実現する必要があるのか、目的とする経済像をはっきりさせないことには、景気刺激策を次々と繰り出しても、線香花火のように短期間で元に戻ってしまうだけではないだろうか。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら