「景気刺激で消費拡大」は線香花火にすぎない これまでの20年で家計の姿はどう変わったか

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雇用者報酬、個人経営者の所得とも振るわず

最も大きな項目である雇用者報酬は262.3兆円から263.4兆円へとわずかながら増加している。ただし、この中には実際に毎月受け取る給料などの賃金・俸給のほかに、厚生年金や健康保険などの社会保険料の企業負担分も含まれている。社会保険料の企業負担分は30兆円から40兆円に増加していて、これを除くと賃金・俸給は232兆円から229兆円へとわずかながら減少している。

個人が経営する小規模企業の所得である「営業余剰・混合所得」は47.2兆円から37.8兆円に減少している。GDPの特殊な考え方である持ち家の帰属家賃(注)もここに入っていて、持ち家から得ている所得は16.1兆円から26.0兆円に増加している。個人商店などでは企業の収益と経営者個人の所得が分離できないため、企業としての利益も含めて混合所得として家計部門の収入に計上されているが、個人経営の企業数は減少しており、混合所得は31.2兆円から11.8兆円に減っている。

(注)持ち家の帰属家賃:たとえば、東京と大阪に持ち家に住んでいる人がいて、それぞれ大阪と東京に転勤になったために、お互いの家を借りて家賃を払ったとする。家賃が同額だったとすると、この転勤の結果、GDPが家賃の分だけ増えることになるが、家賃が同額ということは2人の所得も消費水準も転勤前と変わらないはずだ。こうした不合理を避けるため、GDPを推計する際には、持ち家に住んでいる人は自分で自分に家賃を払っているという計算をしている。これを、持ち家の帰属家賃という。
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