ぽっこりお腹の人が抱える健康リスクの正体 認知症、がん、糖尿病…慢性炎症が危ない

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急性炎症の原因となったものをずっと排除できなかったり、免疫系のアンバランス、加齢などの理由で、炎症を長期間にわたって「消火」できなくなったりしたとき(=慢性炎症)、免疫系の暴走が始まり、体を攻撃し始めます。

慢性炎症によって、本来は攻撃対象ではない「健康な組織」も攻撃され、臓器が破壊され、やがてさまざまな生活習慣病が発症したり、老化が恐ろしいほど加速したりするのです。

「慢性炎症」のいちばん恐ろしいところは、自覚症状がほとんどないところです。さらに、慢性炎症を起こした部位は「元には戻らない」という非常に厄介な性質を持っています。

「歯周病」は最もわかりやすい慢性炎症

見逃してしまうような小さなボヤ(慢性炎症)でも、長く続くと、大火事(深刻な病気)になる――。その最もわかりやすく、最も身近な例が、「歯周病」です。

口の中に入ってきた歯周病菌は、“空気を嫌う菌”なので、「歯周ポケット」と呼ばれる歯と歯ぐきの間の溝に潜り込みます。しっかり歯みがきをして歯のまわりについた汚れを取り除かなければ歯周病菌はどんどん増え、「プラーク」というネバネバとしたかたまりをつくりながら、奥へ奥へと進んでいきます。

その歯周病菌と、歯周病菌が出す毒素に反応して、歯ぐきで「炎症」が起こるのが、歯周病の始まりです。そこで気づいて、毎日の歯みがきでしっかりプラークを落としたり、歯科医院に行って汚れを取ってもらったらいいのですが、そのままにしていると、炎症はじわじわ広がっていきます。

歯を支えている歯槽骨にまで炎症が広がり、歯槽骨が溶け始めて、歯槽骨が半分ほどになると、支えを失った歯が少し揺れるように。

それでもなお、そのままにしていると、さらに歯槽骨が失われ、歯ぐきも下がり、歯がグラグラと揺れるようになって、最終的には歯を失うことになるのです。

さらに恐ろしいことに、歯周病菌や、歯周病菌に反応して歯のまわりでつくりだされる「炎症を引き起こす物質(メディエーター)」が、血流に乗って全身を巡り、脳梗塞や動脈硬化、糖尿病など全身の病気を引き起こすことがわかってきています。たとえば、動脈硬化の人の血管から歯周病菌が見つかったという報告が、国内外で多数あがっているのです。

歯のまわりで炎症を起こした原因が、遠くの炎症の原因にもなる。たとえるなら、“飛び火”のようなもの。

このように体の1か所で起こった炎症が遠くのどこかに飛び火して、新たな炎症を起こすこともあるのです。

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