日本でおカネを使うイギリス人の「旅の中身」 1人当たり消費額は中国人を抜いてトップ

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7日間の駆け足だったが、新幹線や電車を乗り継いで東京、箱根、奈良、広島、宮島、姫路、京都を巡った。やはりジャパン・レール・パスを思う存分使ったという。

日本のうどんが忘れられないザックさん(写真:筆者提供)

渋谷の交差点では何百人もが一斉に動き出す人混みの中に身を置き、奈良では静かな街のたたずまいを楽しんだ。おすしを食べていたときは、キュウリだと思って口に放り込んだのが実はわさびで「あの辛さはすぐには忘れられない」。しかし、「マジックのようなすばらしい体験の中のひとつとして覚えておきたい」。

英国人ザックさんは電車を乗り継ぐ中で、駅のプラットフォームで食べた手頃な価格のそばやうどん、駅弁の味も忘れがたいという。

同じく英国人ケントさんは、「日本から帰ってくると、またすぐ行きたくなる」と話す。次回日本に行くときは、ハーフマラソンに挑戦するのが夢だ。

「今すぐにでも代々木公園でゆっくりしたい」

なぜそこまで日本にひかれるのだろうか。

「英国とはまったく違う文化を持つ日本は、自分にとっては心と体のリフレッシュになる」ケントさんは話す。「誰もが親切で、安全。清潔、安心感がある。文化と人との交流を楽しみながら、心からリラックスできる」

「今すぐにでも代々木公園に行って、ベンチでゆっくりしたい」というほど日本にほれ込んでいるケントさん。決まった時間にやってくる電車、現金を持ち歩いていても誰かに盗まれることを心配しなくてもよい空間、飲食店に入れば「いらっしゃいませ」とすぐに声をかけてくれる心地よさがある。「昔の『古きよき英国』を思い出させてくれる日本には、こんな決まり文句がある。つまり、『お客様は神様です』」。

今後、英国を含む欧州の「日本ファン」をもっと増やすために、日本が改善できることはあるだろうか。

ジャパン・トラベル・センターの西川さんは、何か突発的なことが発生したとき、外国人旅行者が行ける場所を設置できないか、と提案する。宿泊施設や交通機関で働く人の英語力の向上も課題だ。

ポンドを円に、あるいは円をポンドに替えることができる場所が限られている点も英国からの旅行者が不便に感じることである。これに筆者が付け加えるとすれば、英国では小売店や飲食店などでのデビットカードによる決済がかなり普及しており、ATMも24時間稼働している。現金はほんの少ししか持たないのが英国人の習慣だ。筆者は日本に帰ると、英国の銀行カード(デビット及びクレジット)が使える小売店などが英国よりも少なく、24時間稼働しているATMが少ないため困ることがあった。

ちなみに、観光庁の「訪日外国人消費動向調査」の年次報告書(2016年)によると、「日本滞在中に得た旅行情報源で役に立ったもの」としてトップに来たのが「インターネット(スマートフォン)」(64%、複数回答)で、「「日本滞在中にあると便利な情報」として最も高い支持を得たのが「無料Wi-Fi」だった(51%)。

中国人の「爆買い」が一段落する中、今後期待されるのは、欧州人のような「体験型」の旅行をする人たちの増加である。インフラ整備にかかわらず、より多くの人が、日本に「また来たい」と思えるようなサービスや工夫を施すことが必要だろう。

小林 恭子 在英ジャーナリスト

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こばやし・ぎんこ / Ginko Kobayashi

成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、アメリカの投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙デイリー・ヨミウリ紙(現ジャパン・ニューズ紙)の記者となる。2002年、渡英。英国のメディアをジャーナリズムの観点からウォッチングするブログ「英国メディア・ウオッチ」を運営しながら、業界紙、雑誌などにメディア記事を執筆。著書に『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』。

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