すると、富雄から「将来的に子どもを作るか作らないかという話でもめました」という返信がきた。メールだけでは詳しい話はできないと思ったので、その夜富雄と電話で話すことにした。
当時、真里は40歳。「今の仕事が好きだし、ずっと働き続けたい。年齢的に出産のリスクを考えたら、子どもはいらない」と言ったそうだ。
対して富雄は、「子どもは授かりもの。結婚して、最終的に子どもができなかったら、それはそれでしかたない。何が何でも子どもが欲しいとは思っていない。ただ、チャレンジをせずに、はなからあきらめるようなことはしたくない。チャレンジをした結果できなかったのなら、それを結果として受け入れる」と。
この富雄の言葉に、真里はかたくなに反発をした。
「それなら、私はあなたとは結婚できません。ほかの方とお見合いをして結婚をしてください」
そしてこの翌日、真里の相談室から「交際終了」の連絡がきたのだ。
その後、何人かの女性とお見合いしたのだがうまくいがず、最後に見合いしたのが香苗だった。当時38歳の香苗は、とても子どもを欲しがっていた。その気持ちが富雄と重なった。順調に交際を進め、結婚となり、結婚後は2人で妊娠に向けてできるかぎりの前向きな努力をした。
ただ、先に記したとおりに結果として子どもはあきらめた。それでも、チャレンジをして導き出した答えに、夫婦は後悔をしていない。
婚活よりも妊活のほうがつらく苦しい
私の相談所を成婚退会し、妊活を試みるもなかなか結果が出せないでいる別の40代の女性が、私にこう言ったことがあった。
「婚活よりも妊活のほうがつらく苦しいです。婚活は、次々に相手が変わっていくから、“今度こそうまくいくかも”という希望が持てる。“結婚できないのは私が結婚を真剣に考える相手に巡り合えないから”と、相手のせいにできる。でも妊活は、夫と私、相手が決まっている中での時間との戦い。妊娠して流産をすると自分をどんどん責めてしまうんです」
この言葉を聞いたとき、“かつての私もそうだったなあ”と思い出した。ずいぶんと自分を責めた。
富雄と香苗が笑顔でトイプードルを抱きながらほほ笑んでいる写真を見て、そこにもまた夫婦の幸せの形があると思った。「努力が報われない」のが妊活なのかもしれないが、それを乗り越えた夫婦には、そこに新たな関係が生まれているはずだと信じたい。
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