漢字の「とめ、はね」にこだわる教育は有害だ

なぜ「木」の2画目をはねるとバツなのか?

漢字の使用については目安になるものがあり、それは「常用漢字表」と呼ばれるものです。そこに示されている目安はかなり緩やかです。「木」の2画目はとめてもはねてもよいと明記してありますし、ほかの問題についても「どちらでもよい」ことが明記してあります。

常用漢字表が緩やかな理由

なぜ、常用漢字表はこれほど緩やかなのでしょうか? それは、古代中国から始まった何千年にもわたる“書”の歴史の中でそれら複数の書き方が行われてきたからです。その長い歴史を無視して、現在の日本のお役所が勝手に「『木』の2画目はとめなければならない。はねてはいけない」と決めることはできないのです。

でも、学校教育を担当する文部科学省は考えました。学校で「どちらでもよい」と教えると、先生たちも教えにくいし子どもたちも混乱して負担が大きくなるのではないか? もっとはっきりした標準が必要ではないか? よし、標準を作ろう。というわけで、学習指導要領に載せる学年別漢字配当表に「教科書体」という字体を示して、それを「標準」として教えることにしたのです。

そこには、先ほどの問題で青文字で示した字体が出ています。標準が示されたことで、子どもたちが使う教科書はすべて字体が同じになりました。つまり、どの教科書でも「木」の2画目はとめてあり、「角」の3画目ははらってあります。

これによって先生と子どもの負担は減るはずでした。ところが、今度は先生たちが「木」の2画目は必ずとめなければならず、はねてあるのはバツだと思い込んでしまいました。なぜなら、教科書も漢字ドリルもすべてそうなっているからです。

先生たちがそう思い込んだもう1つの理由は、「本当はどちらでもよいのだが、負担を減らすために標準を示しただけ」という経緯と趣旨が、まったくと言ってよいほど周知されなかったからです。はっきり言いますが、学校も塾も含めて、ほとんどの先生たちがいまだにこのことを知りません。

その結果、漢字の細部について厳密な指導がなされるようになってしまいました。中には、はね、とめ、はらい、つける、はなす、などを細かく見て、ちょっとでも違っているとバツにするなど、重箱の隅をつつくような指導をする先生もいます。このように細かいところにこだわりすぎてしまうところは、いかにも日本人らしいとも言えますが……。

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