漢字の「とめ、はね」にこだわる教育は有害だ なぜ「木」の2画目をはねるとバツなのか?

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実は、かく言う私も若い頃そうでした。それが子どものためだと思い込んでいたのです。ところが、こちらが熱心に指導すればするほど、子どもたちの漢字に対する苦手意識が強くなり、漢字が嫌いになる子が増えるという現象を目の当たりにしました。それはそうですよね。子どもたちにしてみれば、いくら頑張ってもよい点数がとれないのですから。

文部科学省が出している学習指導要領を解説する本の中にも、「教科書体の字を標準として指導するが、これ以外を誤りとするものではない」という趣旨のことが書かれています。つまり、こだわりすぎないでほしいと文部科学省も言っているわけですが、このことも広く周知されていません。

書き順についても同じことが起きた

ここまで字体について書いてきましたが、書き順についても同じことが起きました。

たとえば、「上」や「点」という字の1画2画は、学校では「縦・横」の順番で教えていて、教科書も漢字ドリルもすべてそうなっています。でも、長い書の歴史では「横・縦」の書き順も広く行われてきましたし、特に行書体ではこちらのほうが普通なのです。

でも、子どもたちの負担を減らすためということで、文部科学省が「学校では『縦・横』と教える」と示しているのです。ところが、ここでもまたその経緯と趣旨が周知されていません。字体と同じように、子どもたちの負担を減らすためということで書き順の教え方の標準を示しただけなのに、今度は先生たちがそれにこだわりすぎて、子どもたちの負担を増やしてしまっているのです。

私は、字体や書き順について、「どちらでもよい」ものは「どちらでもよい」と教えたほうがよいのではないかと思います。そのほうが、先生と子どもの負担が少なくなるのではないでしょうか? それに、そもそもそれが真実なのですから、真実を教える必要があります。

あるいは、初学のうちは今のように標準をもとに教えるにしても、義務教育の最後である中学卒業までには、上記の経緯と趣旨を子どもたちに説明して、本当は「どちらでもよい」漢字がたくさんあるということを教えるべきです。

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