「ジャケ買い」されるペット用品の真の実力 優れたデザインが商品を輝かせる

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多くの市販の蚊取り線香が化学成分を含んでおり、小さな子どもやペットがいる家は、こうした成分を懸念する向きもある。その点、菊花のせんこうは、除虫菊の成分を抽出する手間を惜しまず作っている。「人間の蚊よけとしてももちろん使えますが、実は除虫菊の成分は強めにしています。蚊に刺されて人間が命を落とすことは珍しいですが、犬や猫は蚊を媒介して、フィラリアにかかると命取りになる。つまり、ペット用の菊花せんこうは、より効力がすぐれている」(川村氏)。

菊の花の絵が入ったパッケージは、見た目にも楽しく、菊花のせんこうはアウトドア愛好者にも好まれているという。「人用はないのか」との問い合わせが相次いだこともあって、黒いパッケージの「人間用」も売り出すようになった。

アポロ・アンド・チャーは「懸け橋的」存在

カタログには、川村氏の愛犬(写真左)や、知人の猫や犬が登場する(撮影:編集部)

誕生から3年経ったアポロ・アンド・チャーだが、川村氏には商品を大々的に売り出すつもりはない。一方で、インスタグラムで人気を集めるメークアップアーティストや料理研究家など、アポロ・アンド・チャー愛用者がインスタで商品を紹介することで、じわじわと口コミで広がっていくことを期待している。素材や製造工程の透明性が高く、見た目が優れているものには、出費を惜しまない。川村氏は、そんな「丁寧に暮らしたい」と考えている人たちに支持されたいと考えている。

ペットケア事業はまた、社会的貢献の側面もあるという。たとえば、中身が優れたものであれば、デザインの力でそのよさをさらに伝えることができる。川村氏が手掛けるデザインでも、商品ができるまでのストーリーや価値を伝えることにこだわっている。「地方の企業の多くは、商品を時価で売っているが、原価を聞いてみるとそれではまるで儲けがない。商品を『東京モノ』にすれば、ステージが上がり、本来の値段で売れるようになります」。

事業の採算が取れるようになるのはまだこれからだそうだが、将来的に利益を生むようになったら財団を作る夢を持っている。自身もニューヨークでデザインを学んだという川村氏は、さまざまな夢を持つ子どもたちの支援をしたいと考えているのだ。

川村氏にとって、アポロ・アンド・チャーは、多くの人をつなぐ「懸け橋」のような存在なのだろう。農家や生産者、商品開発をする企業、食や製品を楽しむ人たち、そしてペット。それぞれの立場の人の生活や環境を向上させていくような仕組みをつくる。それを実現させてくれるのが、デザインの力なのである。

斉藤 真紀子 ライター

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さいとう まきこ / Makiko Saito

日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)金融記者、朝日新聞出版「AERA English」編集スタッフ、週刊誌「AERA」専属記者を経てフリーに。ウェブマガジン「キューバ倶楽部」編集長。共著に『お客さまはぬいぐるみ 夢を届けるウナギトラベル物語』

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