京都の老舗和菓子屋を救った若女将の超才覚 創業200年の伝統を現代へ通用するワザに
ただ、由依子さんが女将として送ってきたこの16年は、まさに戦いの連続だった。
夫の病魔、若女将に次々と襲い掛かる壁
始まりは、夫・良和さんとの出会いにさかのぼる。由依子さんは、学生時代から料理好き。趣味が高じて本場フランスへ留学するほどだった。そして大学時代に良和さんと出会った。良和さんは当時25歳で、「亀屋良長」の8代目を継いでいた。
出会いから3カ月、2人はスピード結婚を果たす。これが由依子さんの人生を劇変させた。ほどなく、女将として本格的にお店を手伝うようになった頃、由依子さんは衝撃の事実を知る。会計士から見せられた店の資料で、多額の借金を抱えていることがわかったのだ。
その額は数億円にも上っていた。主な原因は3つだ。まずは在庫の管理を含む生産ラインが整っていないこと。2つ目は新しいお客さんの開拓ができておらず、売り上げが伸び悩んでいたこと。そして店のビルの建築費だった。
「不安でしたね、この先どうなるかって……」(由依子さん)。お店に残る、歴史を感じる品々。この伝統ある和菓子店を自分の代で終わらせるわけにはいかない。
「借金返済のため、自分に何かできることはないか?」。そう考えた由依子さんが着目したのは新規顧客の開拓だった。このお店にたくさんある伝統的な和菓子を、若い人にも知ってもらえば、もっと売れるかもしれない。そのために自身が学んできたフランス料理の知識を和菓子に生かせるかもしれない。
しかし、老舗の伝統が障壁となる。若者向けの新メニューを古株の職人に提案してみると
「こんなん亀屋さんの京菓子ちゃうわ! わしらは亀屋さんの暖簾を守って和菓子を作ってんのや! 何も分からんヤツが口を出すな!」(職人さん)
と一蹴された。さらに、夫の良和さんに相談すると…
「変えへんことが伝統やねん。変えてしもうたら、昔からのお客さんが離れてまうかもしれんで。簡単に変えられん職人の気持ちもわかるやろ」(良和さん)
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